「クセを見抜くために、シワ1つ見逃さない」荒木雅博の盗塁/プロの技〈4〉

中日の荒木雅博1軍内野守備走塁コーチが、現役時代に打ち明けた「プロの技」を掘り起こし。「そこまで見ますか!」の観察眼に、失敗しない盗塁の極意がありました。(2015年2月25日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

★「内海から1個」

中日荒木雅博内野手(37)の盗塁の極意は、極めてシンプルだった。基本はプロもアマチュアも同じ。プロ20年目を迎えた超一流が、盗塁成功に向けて欠かせないのは、4つのポイントがあることを明かした。

昨年12月のことだ。荒木は「今まで見た中で一番走りにくい。予備動作なく、けん制を投げてくる。これだけ長く対戦していても(タイミングが)分からない」と認めた上で、15年の目標に「巨人内海から、1個でも走りたい。ディレードスチールでもいい」と掲げた。高い技術を持つからこそ、プライドが言わせた言葉だった。

そのプライドを理解するのが、12年の盗塁王、後輩の大島だ。昨年途中からベンチ内で荒木のレクチャーを受けるようになった。「妥協がないすごい人。いろいろ教えてもらい、頼りにさせてもらっている」と師と仰ぐのも、言動に説得力があるからだ。

荒木は37歳の昨年も17盗塁を決めた。特筆すべきは失敗の1。高い成功率を支えているのは、誰にでも共通する基礎の部分。土台の上に入念な「観察」を加え、成功率アップに結びつけている。

★ベンチのしぐさ、シートノック

「塁上にいるときだけでなく、ベンチにいるときも投手と捕手のしぐさをチェックする。捕手なら試合前のシートノックから見る」

ヒントは目の前に転がっている。「ノックには選手の性格が出る」とまで言う。練習では送球が安定していても、試合でアドレナリンが出たらどうなるのか、などの想定もする。塁を盗むために、あらゆる情報を盗む。

「投手については、僕は足の幅をよく見る。たとえばセットポジションの足幅が広い投手は、ズボンのシワが多くなる。シワが多いとつまり…。シワを作りたくなければ、ぴったりしたズボンをはいた方がいいよ、ということです」

細かい説明をあえてボカしたが、実はそこまで見ている。一見、けん制時とホーム投球時に何のクセがなかったとしても、ユニホームのシワ1つに変化が表れることもある。

一瞬で見抜けるときもあれば、ビデオを何時間も見て気付くこともある。盗塁を巡って、ユニホームのサイズにまで駆け引きが及ぶ。「投げる前に無意識に予備動作が入る投手がいる。じっくり見ていれば、何か発見があるはず」と強調した。

★高さ、強さ、度胸

「低すぎず、高すぎず。よく『スタートは低く』と教えられると思うけど、自分に合うスタート方法を見つけてほしい。練習時のダッシュなどでスタートを切りやすい高さを探すこと。ひざの位置、腰の位置、腰の曲げ具合などをチェックする」