「リラ10」で遅れてくる腕からズドン 高橋朋己の振り子投法/プロの技〈7〉

大好きな投手でした。西武の高橋朋己投手。「ドーン」とくる直球の秘密を、物理学の視点から解説してくれました。深くて楽しい語りをどうぞ。(2015年2月27日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

最速149キロながら、体感速度では球界随一と言われる左腕がいる。西武高橋朋己投手(26)だ。独特な「振り子投法」により、体感では160キロ級の速球を生んでいる。加藤学園高(静岡)時代、最速130キロにも満たなかった。あこがれていたスピードを追い求め、投法の変遷を重ねて、唯一無二のスタイルに出会った。

★「チャプマンより速く感じる」

世界最速と言われる投手は、キューバ代表のエースだったチャプマンだ。最速171キロを誇り、日本が対戦した09年WBCでも160キロ前後の速球を連発した。

当時を知る巨人村田は言う。「チャプマンも速かったけど、西武の高橋の方がもっと速く感じる」。高橋朋の最速は149キロ。球界でも速い方ではあるが、突出してはいない。だが、体感速度なら世界クラスに跳ね上がる。

高橋朋は快速球の原理を、絵を描いて説明した。

高橋朋一定のスピードで、左右に振られている振り子がありますよね。棒で横から力を加えると、振り子のスピードが急にグンと上がるじゃないですか。これが僕の投げ方です。

左腕の高橋朋にとっての〝棒〟は右足だ。

投球動作を開始して上げた右足を地面にピンと伸ばして着く。右足が突っ張り棒になり、振り子である体は「く」の字のような形になって、反動で腕が強く振られる。

◆二重振り子運動単振り子運動中にもう1つ支点を作ると、支点間で運動エネルギーが支点から先へ転移し、速度を増す(イラスト参照)。高橋朋はこの原理を利用して、支点(腰)に踏み込み足の右足で力を加えて、左腕の振りを速くする独特な投法にしている。

理想で言えば、ダルビッシュや大谷のように、踏み込んだ足をバックステップさせたいという。「あれが振り子の最強版。1回、やろうとしたけどできなかった。体の使い方が分からない。センスがないんです」と自虐的に笑った。

センスがない―。野球人生の途中まで、快速球とは無縁だった。