「近くから速く。ベースの下に足を入れる」田中賢介のスライディング/プロの技〈8〉

「プロの技」は、日刊スポーツ紙上で2015年に展開した連載です。今となっては貴重な、現役を引退した名選手が残した証言も。観戦のヒントになります。(2015年2月28日掲載。所属、年齢などは当時)

プロ野球

10年には34盗塁をマーク。06年から5年連続20盗塁以上を記録し、メジャーでも盗塁経験のある日本ハム田中賢介内野手(34)だが、チーム1、2を争う俊足がウリな選手ではない。高い走力が評価され、結果を残すその裏には…。スライディング技術の巧みな「技」があった。

★右膝の内側を擦りむく

「スライディング」という言葉を調べると「滑ること」とある。だが田中のスライディングは、厳密には〝滑っていない〟。

「極論を言えば、ダーッと走ってキュッと止まるイメージ。お尻は(地面に)あまりつかないんです」

ザザーッと土煙をあげて滑るのではなく、ベース目がけて飛ぶような感覚。理想的なのは「近くから速く。ベースの下に足を入れる」のだという。

滑る時間が長ければ、摩擦力で当然速度は落ちる。いかに、ダッシュしてきたスピードを殺さずに、ベースで止まるかを追求しているのだ。

最高のスライディングができたとき、田中は必ず、右膝の内側を擦りむく。各選手によって左右どちらの足でスライディングするかは違うが、田中の場合は右足を下側にし、左足先でベースに触れる。

想像してほしい。通常、ベースに向かってスライディングした場合、下にした足のひざから、すねの外側と尻部分が土で汚れるのが一般的だと思う。

だが田中は、たたんだ足のひざの内側が地面に接し、尻もあまり汚れないのだ。体を横に向けながら、前に出した足を伸ばす。それが「一番速くて(審判にも)セーフに見せることができる」のだという。

★本塁突入でも

2年間のメジャー、マイナー経験でも、自分の追い求めてきた技術の正しさを再確認した。