【THE GAME〈7〉2004年9月11日:ロッテ3―2日本ハム】垣内の大仕事
いつも冷静な秋山惣一朗記者でも、簡単にリミッターが外れてしまう野球の力…チームと選手、いっぺんに雌伏の時を乗り越えた瞬間を描きました。(2020年5月8日掲載。所属、年齢などは当時。敬称略)
プロ野球
★マリン決戦に3万5000人
西日が右翼席の後方、東京湾に沈んでいく。少し肌寒い秋の夕暮れ。定位置のBクラスが確定しているチームは消化試合の真っ最中。
目標を失った選手たちのプレーを、まばらな観客がぼんやり眺めている。記者として、ファンとして、時に熱く、時に距離を感じながら通ってきたが、シーズン終盤の千葉マリンには、いつも哀愁が漂っていた。
だが、04年9月11日、ロッテ―日本ハム26回戦は、いつもの秋とは、少し様子が違った。
球界再編問題でプロ野球に激震が走ったこの年、パ・リーグはプレーオフ制度を導入した。3位までに入れば、日本一の可能性がある。
下位常連チームのファンにとっては、まさに天恵。0・5ゲーム差で追う3位・日本ハムとの直接対決は、誰が呼んだか「マリン決戦」。プレーオフ進出という未知の希望に導かれ、不人気の代表みたいなカードに、3万5000の大観衆が詰めかけた。
★谷保恵美さんの声
ロースコアのしびれる試合は、2―1と日本ハムリードで9回裏2死無走者。敗色濃厚の展開で、名手・小笠原道大が信じられないような連続失策を犯して同点。見たことのない熱量と聞いたこともない声量の歓声が、土曜のマリンを揺らした。
試合開始から、すでに4時間以上が経過して、スコアボードの時計は、午後5時30分を回っている。力ない残照を浴びるグラウンドに、場内アナウンス、谷保恵美さんの声が響く。
「11回裏、マリーンズの攻撃は、8番レフト、垣内」
