【サヨナラ、札幌ドーム〈1〉】夢の大きさで決まる器 中田翔の放物線を育んだ器
2022年9月28日をもって、日本ハムが札幌ドームを離れます。プロ野球のフランチャイズ制を定着させた功績は計り知れない、球史に残る球場。主として活躍した選手に思い出を聞きました。打の主役はもちろん、中田翔内野手(33)。球場最多の通算98本塁打を放ち、ファイターズの北海道定着に大きく貢献しました。
プロ野球
「広いという以外は、完璧な球場」
「広いという以外は、完璧な球場だったんじゃないですか?」。札幌ドームで誰よりも多くの本塁打を放ってきた中田だから言える、最大級の褒め言葉だった。
さよなら、札幌ドーム。来季から日本ハムの本拠地が新球場・エスコンフィールド北海道に移る。昨年8月に巨人に移籍した中田にとっても、ひとごとではない。
思い出すのは、日差しを浴びながら必死に汗を流した14年前。「僕にとっては特別な場所でした。1年目、1回も1軍に上がれず、札幌ドームで試合に出るという目標を掲げて2軍の千葉の鎌ケ谷で毎日頑張っていた」と大きなドームでの思いを募らせた。
2007年に入団してから、本拠地で歴代最多の615試合に出場し、同最多の98本塁打、378打点。輝かしい成績を残し、色あせない日々を過ごしてきた。
「あの声援にすごく救われました」
かつての〝家〟への思いは持ち続ける。「やっぱりいろんな感情、思い出があります。それがホームじゃなくなるということに関しては、悲しく思います」と思いをはせた。
不祥事がきっかけで移籍し、現在は巨人の第91代4番として東京ドームのファンを沸かせるが、根底にあるものは変わらない。
98発の中で、一番印象に残っている本塁打は…。「いろいろな感情があったのは、やっぱりジャイアンツに移籍してからのホームランですかね」と5月28日の古巣・日本ハムとの交流戦での1本を挙げた。これが「敵地・札幌ドーム」で最初で最後のホームランだった。
「ファンの皆さんの期待を裏切ってしまうという形でジャイアンツに来て、そこから初めての札幌ドームでの試合だった。どうかなという風に思っていましたけど、あの声援に僕自身もすごく救われましたし、心の底からうれしかった。居心地がいいと言ったらおかしいですけど、今まで13年半、ずっとやってきた球場なので、特別な思いはありました。ありがたいなという気持ちでいっぱいでした」
スタンドを見渡すと、温かいファンの笑顔と、中田の日本ハム時代の背番号「6」のユニホームが見えた。不安な気持ちは一瞬で晴れた。
「打球を上げないと」
誰よりも多くのホームランを札幌ドームに届けてきた。だからこそ、誰よりもその広さに苦しめられてきた男でもある。
両翼100メートル、中堅122メートルで、外野フェンスの高さは5・75メートルと球界屈指の広さ。
「久々にホームに帰って札幌ドームに入ると『やっぱりここ広いなあ』って、毎回思ってた。球団に何回も『狭くしてくれないですか?』って聞いたこともある。タイトルも変わってきちゃうから。フェンスがあれだけ高いから『うわー』っていう思いはたくさんしましたけどね。何本損しているんだとは思う。それはそれで、いい思い出ですけど」
愚痴をこぼしながらも、笑い飛ばせるだけの本塁打を積み重ねてきた。11年から10年連続2ケタ本塁打。20年には、初の本塁打王のタイトルまであと1本となる31本塁打を積み上げた。
もがき苦しんだ分だけ〝攻略法〟も知っている。
