だから私はこれからもスポーツを書く。それを背景に人を書く。

もう20年以上も前のことなのに、つい昨日のことのように鮮明に覚えている一日がある。日刊スポーツに入ったばかりの頃だった。右も左も分からない私はその日、デスクに連れられて初めて「現場」に行った。プロ野球の試合が開催されるスタジアムだった。

プロ野球

鉄仮面をつけたように無表情のデスクは、まだリクルートスーツの新人をゲーム直前のダグアウトに連れていき、放り出した。そこで見た光景はおそらく一生忘れることはないだろう。

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1977年千葉県生まれ。名古屋外国語大学を卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。中日、阪神などプロ野球担当記者を16年間経験したのち退社し、文藝春秋Number編集部に所属。
現在はフリーのノンフィクション作家として活動している。「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」(文藝春秋刊)でミズノスポーツライター賞、大宅壮一ノンフィクション賞、本田靖春ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。
最新刊に「虚空の人 清原和博を巡る旅」(文藝春秋刊)がある。