満塁アーチ食らった柳田に感謝 痛恨を「楽しい」と言える山本由伸の3倍返しマインド
最多勝、最優秀防御率、勝率、最多奪三振。オリックスの山本由伸投手は、2022年も投手の主要タイトルを総なめにしました。2年連続の「投手4冠」は史上初。6月18日の西武戦ではノーヒットノーランも達成し、令和4年の時点でNPB最高峰の投手であることを証明しました。ごつい数字が並んで忘れている方も多いはず…春先は調子が上がらず、2軍再調整を経験しています。雌伏の時を飛躍の礎とした24歳のシーズンを振り返ります。
プロ野球
5月3日ソフトバンク戦 6回1死満塁 7球目の153キロ
珍しく、山本が両膝に手をついた。視線の先には、ほとんど見たことのない光景が広がった。
5月3日、ソフトバンク戦(ペイペイドーム)。同点で迎えた6回1死満塁。カウント2―2から2球ファウルで粘られた7球目、153キロをソフトバンク柳田に振り抜かれた。
「調子が全然ダメだった。それまでは、ごまかして抑えられていたけど、うまく修正できなかったんです…」
左中間スタンドに飛び込む打球を見つめ、昨季の沢村賞投手は、珍しくうなだれた。プロ入り初のグランドスラムを被弾。自己ワーストの7失点となり、この時点でマウンドを降りた。
「あの1球は、結構、鮮明に覚えています。打った柳田さんがすごいけど、やっぱり悔しかった」
リーグ連覇を狙うチームは、前日の西武戦を競り負け、15勝15敗で勝率5割。2位ソフトバンクとの初戦を落とせば、Bクラス転落となる。相手主砲との対決は、まさに勝敗の分岐点だった。山本は記憶をたどった。
「最後、インコースにいけると思ったんです。だから、僕、あのとき2回、若月さんのサインに首を振ってます。1度目が変化球、2度目が外角真っすぐのサイン。自分で選んで投げたボールで、コースを狙いすぎた」
内角を狙い、リリースの瞬間に体の重心が一塁方向に倒れた。バランスを崩して、体が開いた。
「ひゅーっとボールが(ゾーンの)真ん中に入ってしまった。すごく悔しい1球でした」女房役の若月は、3度のサイン交換の末に、エースが内角直球を選択した理由をこう推測する。
「本人的には、その日のフォークの調子がよくなかったから、首を振ったのかな。ただ、2人でサイン交換して決めたボールなので、悔いはないです。ちょっと(中に入り)逆球気味でしたけど、打った柳田選手が本当に素晴らしいと思っています」
バッテリーで再調整 心技体を洗い出す
山本はこの敗戦により、3勝2敗。バッテリーは翌日にそろって、再調整のため出場選手登録を抹消された。
山本に関しては、疲労回復を考慮した面もあった。しかしチームはその後、7連敗という最悪の状況に陥る。結果的には、143試合目で大逆転のリーグ連覇を果たすが、マジック点灯は1度もなかった。それだけに、長く苦しい戦いだった。ただエースは「悔恨の1球」に、思いを新たにした。
「自分で(サインを)選んだからには、しっかり投げ切らないといけないんです」
1球の選択―。山本は、7つの球種を持つ。どれを使うか。配球面で選択肢は多い。

1994生まれ。2017年4月日刊スポーツ入社。
3年間の阪神担当(虎番)経て2020年からオリックス担当。2021年は、悲願の25年ぶりVを熱烈取材。記者コラム「四季オリオリ」を投稿中。オリックス情報満載の公式ツイッターのアカウントは@nikkan_mashiba