【ドラフト1位】高松商・浅野翔吾を変えたイチローとの2日間…肌で感じた野球愛

2022年夏、甲子園に新たな怪物が誕生しました。高松商(香川)・浅野翔吾外野手(3年)。高校通算68本塁打を誇るスラッガーは甲子園で3本塁打を放ち、その名は全国区となりました。20日のドラフト会議では巨人が1位指名の方針を固めるなど目玉的存在です。昨冬、イチロー氏(マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクター、48)から学んだことが大きな飛躍につながりました。長尾健司監督(52)の証言を交え、「イチ流」の教えを解き明かします。

高校野球

◆浅野翔吾(あさの・しょうご)2004年(平16)11月24日生まれ、香川県高松市出身。小学3年時に野球を始め、屋島中では捕手。中3時にU15日本代表に選出され、アジア選手権優勝。高松商では1年夏の代替大会からベンチ入り。外野手で2、3年夏の甲子園出場。甲子園通算4本塁打。U18W杯日本代表。目標の選手はアストロズのアルテューベ。171センチ、86キロ。右投げ両打ち。

ドラフト会議前は取材詰めの日々ながらも、カメラを向けられると爽やかな笑顔(撮影・中野椋)=2022年10月9日

ドラフト会議前は取材詰めの日々ながらも、カメラを向けられると爽やかな笑顔(撮影・中野椋)=2022年10月9日

★「疲れた時も全力で振って形をつくる」

あの日を境に、浅野は両手でバットを振り切るようになった。練習の最後の最後、一番キツい瞬間で、だ。

「常に全力の中で形をつくる。疲れた時も全力で振って形をつくっていくんだよ」

21年12月。香川・高松市内のレクザムスタジアム。イチロー氏と過ごした2日間で、浅野の心に最も響いた言葉だ。これを胸に今夏の甲子園で3本塁打。一躍ドラフト1位候補に躍り出た。

高松商業高校の指導に訪れ、打撃を披露するイチローさん=2021年12月12日

高松商業高校の指導に訪れ、打撃を披露するイチローさん=2021年12月12日

いくら大切なことだと分かっていても。17歳がすぐに行動に移し、「怪物」「超高校級」と騒がれるようになった今も継続できるのには、理由がある。「イチロー塾」の直後、長尾監督の言葉が刺さった。

「イチローさんほど野球を愛する人はいないと思うけど、お前もそのぐらい野球を愛していったらいいんじゃないか」

長尾監督は当日、イチロー氏と話すことを避けていた。

「(過去にイチロー氏が訪問した)千葉明徳の先生も国学院久我山の先生も、みんなノートを持ってイチローさんにひっついてメモをとっていたけど…。僕がイチローさんからたくさん学んだって、先に死ぬだけですから。若いやつに少しでも時間をあげないと」

ポリシーのもと、あえて距離を置いた。だからこそ見えたものがあった。

「スーパーメジャーリーガーって体ではないのよ。どちらかというとスマートな、背の高いジャニーズ系。それで世界のトップに君臨するヒットメーカーなんだから。その秘密はなんだろうって言ったら、野球の愛し方がハンパなくて」

バットをチームに渡すイチローさん=2021年12月12日

バットをチームに渡すイチローさん=2021年12月12日

グラウンドに出てきた瞬間、ハツラツとランニングする姿。子どもたちの練習を笑顔で見守る姿。

「好きな女の子に手を抜かないのと一緒。イチローさんは野球に全く手を抜かない。(放課後に)ボーリングしたいと言うてるうちは、イチローさんには勝てない。死ぬまで野球。愛し方が、お前らと違う」

教え子たちにスーパースターとの違いを説いた。