【開場99年】「阪神園芸」現場トップの1日に密着 整備を無形文化遺産の域まで昇華

「神整備」は、どのように生まれるのでしょうか。阪神の主催試合や高校野球など、1年を通して甲子園球場のグラウンドキーパーを担う阪神園芸の甲子園施設部。悪天候でも試合を可能にする職人技は「神整備」とも称されます。阪神のナイター開催日、現場トップの金沢健児部長(56)の1日を追い、極意に迫りました。

プロ野球

◆金沢健児(かなざわ・けんじ)1967年(昭42)6月6日生まれ、兵庫県神戸市出身。学生時代に甲子園球場でグラウンド整備などのアルバイトを経験。高校卒業後に2年間、会社員としてOA機器の営業職に従事し、88年3月に阪神園芸に入社。甲子園やグリーンスタジアム神戸(現ほっともっと神戸)などのグラウンドキーパーとして、技術を磨く。現在は甲子園施設部長。

◆阪神園芸1968年設立。兵庫県西宮市に本社を置く、阪急阪神東宝グループの総合緑化事業会社。甲子園球場、鳴尾浜球場など、プロ野球本拠地をはじめ、スポーツ施設の芝生管理やグラウンド整備を請け負う。

要諦は内野の黒土管理 かくも繊細

天候や季節にかかわらず、美しく保たれる緑の芝生と黒い土。寒さの残る3月、悪天候の梅雨、猛暑の夏…。どんな日も変わらない甲子園にしてくれるのは、阪神園芸職員の努力のたまものだ。

「聖地」と呼ばれる球場を守り続ける現場責任者が金沢部長だ。阪神のナイターは午後6時開始だが、タイムスケジュールは早朝から動いている。

午前7時 起床

屋外球場の甲子園にとって、切っても切り離せないのが「天気」だ。金沢部長の朝は、予報の確認から始まる。ルーティンは毎朝、一定の時間帯の天気予報を録画しておいたものを見ることだ。

「自分の中で基準にしている人(気象予報士)と、時間帯があって。朝の天気予報も時間帯によって詳しさが違うんです。求めているものが普通の人とはちょっと違うので」

同じ関西の番組、同じ予報士でも、時間帯によって報じる詳しさが違うという。そこに、雨雲の動きや予想天気図の見方など、長年の経験に基づく独自の視点を加味して、甲子園の〝金沢天気予報〟をつくる。当日の作業イメージを膨らませ、自宅を出発する。

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