【U18】パワー全盛の時代に伍した馬淵監督の涙…「スモール連峰」が頂点に/〈1〉

台湾で行われた野球のU18W杯で、高校ジャパンが初の世界一に輝きました。現地で取材した日刊スポーツ新聞社の東西アマチュア野球キャップ、柏原誠記者と保坂恭子記者が、さまざまな角度からリポートする連載「台湾的世界棒球見聞録」を全8回でお届けします。第1回は「高校野球はどこへ 世界を制したスモールベースボールの是非」。

プロ野球

「バスに乗って育ったんだろうな」

日本の試合が行われた台北市北部の天母野球場には毎朝、路線バスで通った。

U18W杯のメイン会場になった台北市立天母野球場=2023年9月10日

U18W杯のメイン会場になった台北市立天母野球場=2023年9月10日

約7キロの道のり。30分近く乗っても15台湾ドル(約70円)と、かなりの割安。便利この上ないのだが、難点は乗り心地。ジェットコースター並みの急発進、急停車。足を踏ん張り、体幹に力を込めていないと吹っ飛ばされそうだった。時刻表がないのも日本人にしたら不安でしかない。

台湾のバスは、手を挙げないと止まってくれない…2023年9月10日

台湾のバスは、手を挙げないと止まってくれない…2023年9月10日

決勝の朝の運転手さんも激しかった。いつものようにバスの中で内転筋と腹筋をプルプルさせながら、それとなく軽口をたたいた。「台湾の選手もバスに乗って育ったんだろうな。だから強いんだな」と。途中から乗ってきた別の記者は不思議そうな顔をしていた。

軒なみ150キロオーバー

バスの揺れで妙なこじつけが浮かぶほど、台湾チームのフィジカルの強さは強烈だった。日本は決勝前日にも対戦し、完敗だったが、記者はそれまでも台湾の試合は生で見ていた。

チーム本塁打は4本を誇り、投手は軒なみ150キロを超える。米国よりも腕っぷしが強く思えた。

台湾代表のエース、孫易磊。最速は156キロを誇る=2023年9月10日

台湾代表のエース、孫易磊。最速は156キロを誇る=2023年9月10日

聞けば、高校のエリートクラスはかなり筋力トレーニングを積んでいるという。決勝では日本がバントを駆使してリベンジしたが、パワーでは全然かなわない。よく勝ったなと、今でも思う。

U15とほぼ同じ身長、体重

高校ジャパンは小さかった。平均身長は176・7センチ。体重は76・2キロ。8月にアジア大会を戦ったU15代表(中学3年生)とほぼ同じだ。

一方の台湾は身長179・6センチあり、12チームで日本より小さいのはメキシコだけだった。だが、あんなに大きく見えた台湾でも身長は全体9位。台湾より上の8チームは180センチ以上あり、トップ米国は186・1センチ。日本とは10センチ近い差があった。

前回大会を制した米国代表の選手たち。屈強なメジャー予備軍が居並ぶ=2022年9月18日、フロリダ州

前回大会を制した米国代表の選手たち。屈強なメジャー予備軍が居並ぶ=2022年9月18日、フロリダ州

そんな小さな高校ジャパンが、スモールベースボールで世界を制した。(馬淵監督はスモールベースと言い、現地メディアはスモールボールと言う)。

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