【U18】「高校野球200年構想」の一環 全国から気鋭の指導者が集う場に/〈4〉

台湾で行われた野球のU18W杯で、高校ジャパンが初の世界一に輝きました。現地で取材した日刊スポーツ新聞社の東西アマチュア野球キャップ、柏原誠記者と保坂恭子記者が、さまざまな角度からリポートする連載「台湾的世界棒球見聞録」を全8回でお届けします。

第4回は「一体誰? 日本を支えた無名のコーチたち 日本高野連が秘めた思い」。

高校野球

「台湾的世界棒球見聞録」連載はこちらから!

馬淵監督が切り出し

決勝後の囲み取材。侍ジャパンの馬淵史郎監督(67=明徳義塾監督)は閉会セレモニーと記念撮影を1時間近くこなして疲労困憊(こんぱい)だった。

もう終わりましょうというタイミングで、わざわざ話題を変えて、付け加えた。

2023年9月10日、天母野球場

2023年9月10日、天母野球場

「今回はコーチが同じメンバーで、2年目なんですよ。岩井君、小坂くん、比嘉くん。もう、ようやってくれました。戦い方もよう知っているし、今回は本当に助けてもらいました。

それと、アシスタントコーチの2人。データをとるのに一生懸命やってくれて、これもめちゃくちゃ大きかったんですよ。そういう力があるからメダルが取れたんでしょうね」

葛西徳一(38)加藤勇次(30)両アシスタントコーチへの感謝を口にした。縁の下の力持ちを担った2人に、最後に光が当たった。

◆葛西徳一(かさい・のりかず=写真右)1985年(昭60)9月4日生まれ、青森県弘前市出身。弘前実、日体大で外野手として活躍。卒業後、弘前東に赴任。10年に監督に就任し14年目。

◆加藤勇次(かとう・ゆうじ=写真左)1993年(平5)2月14日生まれ、山形県酒田市出身。酒田工、千葉工大で捕手として活躍。母校を含めて再編された県立酒田光陵に赴任。監督5年目。

日本の試合が始まる10時間も前。天母野球場のスタンドでメモを取るスタッフの姿があった。

グラウンドでは他国の試合が行われている。岩井隆ヘッドコーチ、打撃担当の小坂将商コーチ、投手担当の比嘉公也コーチ。いずれも甲子園優勝経験もある高校球界の名監督ばかり。その後ろで、若い2人は必死にメモを取っていた。時折、赤い目をこすりながら…。

「聞いてた以上にハード」

葛西氏は、私立の弘前東(青森)で長らく監督を務めてきた。

東北では名の知れた存在で、16年から4年連続で秋の東北大会に出場。あと1歩で甲子園をつかめるところにいる。中央では知られていないが、まさに新進気鋭の存在だ。

優勝を決め、ガッツポーズでマウンドに向かう葛西アシスタントコーチ

優勝を決め、ガッツポーズでマウンドに向かう葛西アシスタントコーチ

加藤氏は酒田光陵(山形)の監督。まだ、目立った成績は残せていないが、県内の強豪とも接戦を演じ、公立校を率いて奮闘。粘り強い指導力にも定評がある。ともに今大会で初めてジャパンチームに加わった。

「いいですね」。5月、加藤氏は山形県高野連から侍ジャパン入りの一報を受けて、薄めの感想を漏らしてしまった。実感が湧かなかったという。集合が近づくにつれ、緊張は高まった。そして台湾入り。目の回るような日々が始まった。

2023年8月28日、東京ドーム

2023年8月28日、東京ドーム

「昨年のアシスタントコーチの方に聞いていたんです。でも聞いていた以上にハードでした」

葛西氏は苦笑いした。

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