【わすれられない味】和牛焼肉が好きすぎたアレックス・カブレラ 今や本業に/連載3

記者には「忘れられない味」があります。時に孤独に、時にワイワイと食する味は、取材の思い出として記憶と味覚に刻まれます。好評を博した紙面の不定期連載が、プレミアムに初登場。「Season3」をご賞味あれ。

その他野球

固いことを抜きに

「選手と食事に行ったことを原稿に書くな」。20年以上前、後輩に注意したことがある。

プロ野球の担当記者は、2月のキャンプが始まればシーズンが終わる10月末まで、ほとんど毎日チームと行動を共にする。

お互い、家族と過ごす時間より多いぐらいだから、一緒に食事することもある。

読者はどう思うか。誤解を与えかねないことは書くべきではない…だけど、食事ほど人柄が表れたり、本音や貴重なエピソードが聞ける場もない。

固いことを抜きに、昔話を振り返ろう。どうせなら、選手も大好きな焼き肉にしましょう。

2001年、西武にアレックス・カブレラがやってきた。

松坂大輔が入団したのに打線が振るわず、2年間リーグ制覇を逃していた。西武グループを挙げて探してきた大砲は、4月は15発と月間外国人最多タイ記録を達成。飛距離もすさまじく、17号は西武ドーム(現ベルーナドーム)の右中間最深部のスコアボード下をライナーでかすめ、テレビカメラ席のネットに突き刺さった。

しばしば度肝を抜く1発を放ったカブレラ。来日1年目の17号も=2001年4月30日、西武ドーム(当時)

しばしば度肝を抜く1発を放ったカブレラ。来日1年目の17号も=2001年4月30日、西武ドーム(当時)

推定150メートルと表示した西武ドーム支配人の星野好男さんが「どこまで飛んだか見当がつかない」という飛ばしっぷりだった。

こうなると、できるだけ肉声が聞きたい。後輩の山内記者と埼玉・所沢市内の焼き肉店に誘ってみた。

和牛ロース&カルビ

ベネズエラ出身で英語は片言だったが、よく食べ、いろんな話をした。和牛のロースやカルビを焼きながら、家族が働く牧場の話題になった。

カブレラ日本では牛にビールを飲ませるんだろう? ベネズエラでそんなことをしたら、先に人間が飲んでしまって仕事にならないよ(笑い)。

「松阪牛」の生産地の三重県が発祥とされる「牛にビール」は、牛の食欲や消化の促進に効果があるとされる。

カブレラは西武、オリックス、ソフトバンクで12年間プレー。2年目に当時の日本記録に並ぶ55発など、通算357本塁打を記録した。

藤川球児との力勝負は、オールスター名場面のひとつだ=2006年7月21日、神宮

藤川球児との力勝負は、オールスター名場面のひとつだ=2006年7月21日、神宮

引退後は、故郷で2つの農場を経営して和牛を育てて米国などに輸出し、経営は順調だという。牛にビールを飲ませているのかは、いつか本人に取材してみたい。

カブレラとはその後もテレビ番組の収録後に、都内の高級焼き肉店で同席した。

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編集委員

久我悟Satoru Kuga

Okayama

1967年生まれ、岡山県出身。1990年入社。
整理部を経て93年秋から芸能記者、98年秋から野球記者に。西武、メジャーリーグ、高校野球などを取材して、2005年に球団1年目の楽天の97敗を見届けたのを最後に芸能デスクに。
静岡支局長、文化社会部長を務め、最近は中学硬式野球の特集ページを編集している。