【新井ズム】新井貴浩監督が龍馬流出で選んだ道と、カープを率いる意味/連載〈1〉

広島新井貴浩監督(46)が指揮官として2年目のシーズンに挑みます。昨季は選手を常に認める「肯定力」で2位躍進に導きました。オフに打線の軸を担った西川龍馬外野手(29)がオリックスにFA移籍。戦力ダウンの危機に、新井監督が選んだ道は? カープ取材歴17年目の前原淳記者が「新井ズム」に迫ります。

プロ野球

◆新井貴浩(あらい・たかひろ)1977年(昭52)1月30日、広島県生まれ。広島工―駒大を経て98年ドラフト6位で広島入団。05年に球団最長タイの6戦連続本塁打。07年オフに阪神へFA移籍。08年北京五輪日本代表。同年オフから12年まで労組プロ野球選手会会長。14年オフ阪神に自由契約を申し入れ、広島に復帰。通算2000安打を達成した16年に打率3割、101打点でリーグMVP。05年本塁打王、11年打点王。ベストナイン2度(05、16年)、ゴールデングラブ賞1度(08年)。18年限りで現役引退した。20年オフに広島監督に就任し、前年5位から2位に引き上げた。現役時代は189センチ、102キロ。右投げ右打ち。

新井監督との握手で痛感したこと

取材者としての認識の甘さを痛感した。

春季キャンプに向けたスタッフミーティングが行われた1月25日。

新年のあいさつを…、と会場へ向かう首脳陣を1人で待っていた。

コーチ陣とあいさつをかわし、「いよいよ、始まるな」と感じていたところに、新井監督と藤井彰人ヘッドコーチ(47)が並んで歩いてきた。

2人はごく自然に右手をスッと出し、順に記者の手を強く握った。

会場までの時間をも惜しむほど話し込む後ろ姿と、右手に残る感触に「始まる」ではなく、「始まっている」のだと感じさせられた。

マツダスタジアムでスタッフミーティングを行う広島新井監督(中央)、右は藤井ヘッドコーチ=2024年1月25日

マツダスタジアムでスタッフミーティングを行う広島新井監督(中央)、右は藤井ヘッドコーチ=2024年1月25日

昨季、新井監督は新人の指揮官としてチームを5年ぶりAクラスとなる2位に押し上げた。前年オフに目立った補強がない中で選手の能力を最大限に引き出して、機動力野球を取り戻し、投手陣を整備した。

限られた戦力の中で、球団の新人監督として最多となる74勝を積み重ねた手腕は特筆に値する。

西川龍馬流出で可能性のあった野手補強

だが、1年目を戦い終えたばかりの11月、西川龍馬がFA権を行使し、オリックスへ移籍した。

昨季46試合で4番を務め、打率、安打、打点でチーム打撃トップの成績を残した打線の核となる打者。チームで数少ない計算できる打者を失い、得点力低下が懸念される。

ファン感謝デーでFA移籍のあいさつをした西川龍馬をねぎらう新井監督=2023年11月23日

ファン感謝デーでFA移籍のあいさつをした西川龍馬をねぎらう新井監督=2023年11月23日

シーズンオフの移籍市場には、戦力として期待できる外野手がいた。

本文残り60% (1471文字/2433文字)