【新井ズム】記者の直球の質問に…新井貴浩監督が見せた「胆力」/連載〈4〉
カープ取材歴17年目の前原淳記者が、新井采配の「謎」に迫りました。広島は開幕当初は戦力が整わずBクラスの位置にいましたが、大瀬良大地投手(33)の復調や矢野雅哉内野手(25)の成長などでチーム力が高まり、首位に浮上。指揮官の用兵に、快進撃の「秘訣(ひけつ)」がありました。
プロ野球
◆新井貴浩(あらい・たかひろ)1977年(昭52)1月30日、広島県生まれ。広島工―駒大を経て98年ドラフト6位で広島入団。05年に球団最長タイの6戦連続本塁打。07年オフに阪神へFA移籍。08年北京五輪日本代表。同年オフから12年まで労組プロ野球選手会会長。14年オフ阪神に自由契約を申し入れ、広島に復帰。通算2000安打を達成した16年に打率3割、101打点でリーグMVP。05年本塁打王、11年打点王。ベストナイン2度(05、16年)、ゴールデングラブ賞1度(08年)。18年限りで現役引退した。20年オフに広島監督に就任し、前年5位から2位に引き上げた。現役時代は189センチ、102キロ。右投げ右打ち。
なぜ代打を出さなかったのか?
「9番、バッター、大瀬良」のコールに、アルプス席を覆う阪神ファンからどよめきが起きた。
5月8日、同点の7回2死三塁で球数95球の先発、大瀬良大地がそのまま打席に向かったときだった。
定石でいえば同点や劣勢の試合終盤の好機に、球数がかさんだ先発投手に打席が回れば、代打だろう。
記者も、代打だと思っていた。
ざわつくスタンドとは対照的に、広島ベンチは落ち着いていた。
新井貴浩監督(47)はこの回の攻撃が始まる時点で決めていた。
「安打以外でも得点できるケース以外は、7回も大地」
1死二、三塁や1死一、三塁など内野ゴロや犠飛などでも得点ができるケースなら代打を送る。
ただ、2アウトとなって打席を迎えれば、そのまま打席に送る―。
結果、2死三塁となったことで代打を送らなかった。
広島ベンチからすれば、想定通り。
参謀の藤井彰人ヘッドコーチも同じ考えだった。
「2アウトになったら、大地、そのまま行かせるよ」
1死二塁の場面で監督からの提案に、なんの躊躇も、ひっかかりもなく、ただうなずいた。
送りバントの意味
記者が疑った理由となったのは、無死一塁の7番矢野へのバント策にあった。
本文残り73% (2398文字/3267文字)
