【少年野球連載】作ったグラブは200万個超 西島唯博氏の視線
日刊スポーツ首都圏版の中学硬式野球のページで「中学最初の推しグラブ」を特集した。進学して本格的に始める人、学童の軟式から硬式に転じる人などなど、新たな野球生活が始まる機会にグラブを買い求める人が多い季節。ただし、新たなチームではポジションが決まっていなかったりするなど、どんなグラブを選べばいいか迷ってしまう。だったら、各メーカーに聞いてみようと、取材を始めたら11社の協力を得た。体格か品質かタイプか価格か…。各社真剣に検討してくれるうちに、「ポジションが決まるまでは、今までのグラブで」という商売度外視の本音や、「価格は要相談!」と大サービス宣言まで飛び出した。野球を仕事にする人にとって野球少年はわが子も同じ!? そんな中、販売から企画、製造まで携わり、作ったグラブは200万個以上という「ワールドペガサス」のプロダクトマイスター西島唯博氏(64)のこだわりに触れてみたい。
日刊スポーツ首都圏版は毎週金曜日に中学硬式野球を特集しています。
その他野球
女子選手のグラブの向き
ワールドペガサスのカタログをめくっていく。巻頭に長く同社のグラブを愛用し、グラブアドバイザーを務める桑田真澄氏(現巨人2軍監督)と西島氏を紹介。桑田氏が投手兼内野手用として同社とつくりあげた「桑田真澄モデル」で始まり、最高級モデルの「硬式用グランドペガサスTOP」へと続く。
しばらく、6万、5万円台の硬式用が並ぶが、10ページ目に「中学生硬式」「女子硬式用」の文字が飛び込んできた。「硬式用グランドペガサスTOPエボルブ」は手が小さな選手に向けたグラブで、ひもを引くだけで手入れ口を調整できる「手首バンドピッタリ調整機能」が標準装備され、小指掛け紐で薬指、中指を固定するフィンガーループ機能がついたモデルも用意された。薬指を安定させるループ(リング)付きは他社にもあるが、2本を固定できるのは珍しい。
開発のきっかけは6、7年ほど前、桑田氏が女子野球の指導に乗り出したころだった。
西島氏が視察に訪れると、バックホームをしようとゴロに突っ込んできた外野手が、何度も後逸した。よく見ると、グラブの先がボールではなく、上を向き、地面とグラブにすき間が生まれていた。
外野手に聞くと「ゴソゴソしてグラブが落ちるんです」。手にしていたのは男性選手が使う大人用で、指袋の中が広く、「ゴソゴソ=ブカブカ」だった。
指先を下を向けて打球を追いかけると、グラブが落ちそうになり、手首で支えるから、先が上を向き、地面とのすき間ができてしまう。
そこで、中指、薬指のフィンガーループ機能付きのグラブを思いつく。成長に合わせて薬指だけにしたり、どちらも無しにもでき、ループのサイズも調整できる。手が小さかったり、指が細い選手にはうってつけだった。
「誰がはめても機能を活用できるのがコンセプト。フィット感はそれぞれ違う。だから手に合わせて調整してくださいということなんです」
なかなかのアイデアは、長年の経験から引き出された。
大阪出身で、中学から大学まで硬式野球に打ち込んだ西島さんは、1983年にアシックスに入社した。関東の野球用具の販売担当を経て、当時アシックスがライセンス契約を結んでいたローリングスのグラブ専任の開発担当に任命されるなど、長くグラブに携わってきた。
販売に携わっていた92年、特許取得機能だったフィンガーループ機能を、アシックスが採用。育ち盛りの少年たちのグラブに搭載された。
再建の途上にあったワールドペガサスに入社したのは2017年。「20年以上がすぎたから特許も切れていた。他社はそんな昔話忘れているけど、僕は当然、覚えていたんです」。
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1967年生まれ、岡山県出身。1990年入社。
整理部を経て93年秋から芸能記者、98年秋から野球記者に。西武、メジャーリーグ、高校野球などを取材して、2005年に球団1年目の楽天の97敗を見届けたのを最後に芸能デスクに。
静岡支局長、文化社会部長を務め、最近は中学硬式野球の特集ページを編集している。