羽生善治、背水からのハブマジック炸裂 95年王将戦VS谷川/レジェンドの記憶①

国民栄誉賞棋士、羽生善治九段(52)が藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖=20)に挑戦する、将棋の第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局が8日から静岡県掛川市で行われる。将棋界を代表するスターの両者がタイトル戦で激突するのは、初めて。タイトル獲得通算99期の羽生は、100期獲得を目指す。そんなレジェンドは1995年(平7)から翌96年にかけ、前人未到の7大タイトル全制覇を達成した。当時を知る将棋担当の赤塚辰浩記者(58)が、「レジェンドの記憶」を5回連載します。

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95年2月、第44期王将戦第5局で対戦する羽生(左)と谷川

95年2月、第44期王将戦第5局で対戦する羽生(左)と谷川

「快進撃もここまでか」「青森(第7局=3月23、24日、「奥入瀬渓流グランドホテル」)はないね」。95年3月13、14日の2日制で、山形県天童市「紅の庄 東松館」で行われた第44期王将戦7番勝負第6局、報道控室では夕方前に局面の検討が打ち切られていた。

6冠(竜王・名人・王位・王座・棋王・棋聖)を保持していた挑戦者の羽生は、谷川浩司王将に2勝3敗。かど番だった。叡王はまだ創設されておらず、7つのタイトルしか将棋界にはなかった。居合わせたプロ棋士の間では、「先手の谷川が防衛し、羽生の7冠達成の夢はおしまい」と断じられていた。たった1人の記者を除いては。

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