【卒コン考察】乃木坂46卒業・久保史緒里 VTR「私たちの声」に込められた意味

久保史緒里が11月26、27日に横浜アリーナで行われた自身の卒業コンサートをもって、乃木坂46から卒業した。2日目公演は、次のブロックの内容を示唆する物語を収めた映像が流れ、久保の狙い通り「1本の映画を見た」ような気分になるライブだった。

久保は11月27日のコンサートをもってグループから卒業したため、本人の口からは現状、卒業コンサートの演出1つ1つの意図は語られていない。本人が「これで一区切り」と話していたように、おそらくこれからも詳しく言及される機会はないのかもしれない。だから推測するしかないし、あえて字にするのはやぼな気もするのだが、書かずにはいられない。それほどすばらしいライブだった。見た者それぞれが感じ、考察し、その全てが正解だという前提の上で、個人的な所感や、ちょっとした裏話をつづりたいと思う。

音楽



(撮影・鈴木健太氏)

(撮影・鈴木健太氏)


スタート~VTR「私たちの声」■ブロックの構成秀逸


2日目公演は「不眠症」からスタートした。久保が「いつか卒業コンサートをできるなら、絶対に1曲目にしよう」とかねて決めていた楽曲だ。同期で「くぼした」コンビとしても知られる山下美月とのダブルセンター。久保にとっては乃木坂46人生で先輩メンバーと共に歌う初のセンター曲でもある。17年10月リリースのシングル「いつかできるから今日できる」の選抜メンバーらを従えて、加入から1年となった新星2人のダブルセンターに当時のファンも沸いた。与田祐希と大園桃子さんがダブルセンターを務めたシングル「逃げ水」の次作。同年末に「インフルエンサー」で初めて日本レコード大賞に輝く乃木坂46に、さらなる厚みと魅力、そして次世代の訪れを予感させたナンバーだった。


「何度目の青空か?」「走れ!Bicycle」「太陽ノック」と生田絵梨花や生駒里奈がセンターを務めた懐かしのシングル曲に、山崎怜奈センターのアンダー曲「錆びたコンパス」と続けて、冒頭ブロックを終えた。曲中に横一列になって、キャプテン梅澤美波が観客にあいさつした。通常は序盤のMCパートで行うが、この日のライブ本編ではMCがなかった。ブロック合間に流れたのは、久保の「1本の映画を見た、みたいなDAY2にしたい」という希望を受けて制作されたVTRだった。過去のVTRやインタビューのような直接的なものではなく「(ライブの)次のブロックを示唆するような物語」のイメージで映像を制作していったという。


まず流れたのは久保が「走れメロス」を朗読するVTR。「仲間」をテーマにした物語、ともとれた。「乃木坂野球部」によるユニット曲「Never say never」に始まり、「平行線」「雲になればいい」「価値あるもの」と久保が参加したユニット曲を披露した。


続いて流れたVTR「私たちの声」と、ブロックの構成が特に秀逸だった。まずはVTRから掘り下げたい。女優渡邉心結が演じる合唱部に所属するとみられる少女「あかね」が、同学年の「あお」に対して「負けたくない」とライバル視しつつ、笑わない厳しい顧問の「久保先生」から指導を受ける。いよいよ訪れた大会に参加するメンバー発表で、久保先生によってソロ担当が「ソロ、あかね」と伝えられる。笑顔で「はい」と答えるあかねだったが、久保先生は「…そして、あお。今年は2人でいきます」と続け、あかねは複雑な表情を浮かべる。


久保先生と2人きりになったあかねは「悔しいです」と目に涙を浮かべた。久保先生は「私も高校生の時、ソロで歌いたかったけど、歌うことはできなかったんです。私1人だけじゃダメだったんだって思いました」と回想しつつ答えた。あかねが「じゃあ先生は何で今も歌っているんですか」尋ねると、久保先生から「観客の中に涙を流している人がいたの。私たちの声が誰かにちゃんと届いているならそれでいいって、そう思えたの。それにあかねさんの歌は、絶対誰かに届きます」と激励され、うなずいた。


VTRのテーマは「私たちの声」。映像が流れた後に披露された楽曲は「今、話したい誰かがいる」「嫉妬の権利」「ありがちな恋愛」。3曲を見て聴いただけでは正直もやっとしていたが、このブロックの締めくくりが久保のソロセンターバージョンの「人は夢を二度見る」だったことで、「ああ、なるほど!」と膝を打った。久保は実にのびのびと、かつ気持ちをかみしめるようにパフォーマンスをしていた。



「人は夢を二度見る」■久保と山下


23年3月リリースの「人は夢を二度見る」は、久保にとって初めてのシングルセンター曲で、同期の山下とダブルセンターを務めた。山下は久保にとってただの同期ではなく、「くぼした」といわゆるセットにされることも多かった存在だ。他ならぬ日刊スポーツも「くぼした」での取材や撮影などを行った媒体の1つ。加入初期の頃から2人でSHOWROOMの生配信などもしていたし、スクショを別媒体の関係者に共有すると「2人ともかわいいですね」「乃木坂、3期生もいい子が入ってきたね」などの反応があったことをよく覚えている。どちらもグループを背負うまでの中心メンバーに成長した。


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