横井ゆは菜・きな結 姉妹に残された2カ月、託すもの託されるもの

妹には覚悟がある、姉には確信がある。国民体育大会の少年女子で横井きな結(愛知・中京大中京高)は7位。リンクサイドからは現役引退を決めている姉ゆは菜(愛知・中京大)が見守っていた。幼少期から姉妹で滑り続けてきた時間は、残りわずか。妹は同級生との高め合いも糧に、姉の立場を継ごうとしている。

フィギュア

〈八戸国体〉横井きな結:少年女子シングル7位・都道府県対抗4位 横井ゆは菜:成年女子シングル8位・都道府県対抗2位

国体少年女子シングル上位成績


順位選手SPフリー合計
1千葉百音68.00123.86191.86
2高木謠58.77113.48172.25
3松生理乃58.64111.26169.90
4吉田陽菜53.54112.26165.80
5柴山歩45.41113.15158.56
6奥野友莉菜57.4897.82155.30
7横井きな結50.7199.86150.57
8瀬川穂乃50.8595.96146.81

国体成年女子シングル上位成績


順位選手SPフリー合計
1坂本花織81.50157.13238.63
2渡辺倫果60.14148.49208.63
3三原舞依77.10130.01207.11
4山下真瑚70.01123.18193.19
5住吉りをん68.13122.52190.65
6江川マリア58.67123.25181.92
7三宅咲綺62.96117.19180.15
8横井ゆは菜55.12122.77177.89

■横井姉妹 国体フォトコレクション■

成年女子SPで演技を見せる横井ゆは菜

成年女子SPで演技を見せる横井ゆは菜

きな結「すごくうれしかった」引退する姉から初めての声掛け

「聞こえましたね、野太い声が」

きな結はうれしそうにフリーの演技中、リンクサイドに近づいてのジャンプの場面を思い返した。

予定していた連続技。後半の3回転トーループを下りると、聞き慣れた低音ボイスが耳に届いた。

「つけろ!」

セカンドジャンプのトーループを続けるように促す、姉ゆは菜の言葉だった。

「叫びになってたんですけど、ちょっとつけられるような状態じゃなくて、無視してしまったんですけど(笑い)」

却下はしたが、染みた。

姉がリンクサイドで応援し、さらに演技中に声をかけてくれたのは、姉妹ですごしてきた長い競技人生でも初だった。

最初で最後の姉妹での国民体育大会。成年女子で出場した姉は、今季限りでの引退を決めていた。少年女子の妹は、同じ「愛知」の看板を背負って、八戸のリンクにいた。

「応援、すごくうれしかったです!」

少年女子フリーで演技を見せる横井きな結

少年女子フリーで演技を見せる横井きな結

愛知に横井姉妹あり。2004年12月にきな結が生まれ、母が次女を抱えながら、長女ゆは菜を遊ばせる事ができる施設はないか探し、その冬から今も拠点とする邦和スポーツランドに通い始めた。生後間もなくでリンクの空気に触れていた妹も、姉の後を追うようにフィギュアスケートの道へ。

姉が昨年末の全日本選手権後に引退を表明。もちろんその決断はそれより前に知っていた。だから、この国体は、特別な思いもあった。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。