夢見るアラフィフ「胸熱」な再出発 高校サッカー日本一監督の長谷川大氏 

桜の花が、各地で開花した。学校、会社、家庭。さまざまな場で、新生活がスタートした。期待、不安。花びらは、いろんな思いを映し出す。ここにも、また1人。環境を変え、新たな芽をいぶこうとする男がいる。

サッカー

青森山田を下し優勝を果たした山梨学院GK熊倉匠は優勝旗を手にする=2021年1月11日

青森山田を下し優勝を果たした山梨学院GK熊倉匠は優勝旗を手にする=2021年1月11日

21年山梨学院を頂点導く

山梨学院サッカー部の長谷川大監督(48)が、3月末で同職を退任した。

高校サッカーファンなら、その名を知っている人もいるのではないだろうか。2021年1月11日。第99回全国高校サッカー選手権の青森山田との決勝戦(埼玉)。奇策で注目を集めた。

「誰も思いつかないんじゃないか」。

まさか、だった。青森山田CB藤原優大(現J3相模原)に、マンマークを敢行。「10回戦って、1、2回勝てればいい相手」と、見ている者の度肝を抜いた。「心臓部」を封じることで、ビルドアップの供給源をシャットダウン。PK戦の末に、優勝を手にした。

頂点で咲かせた花。ただ、花びらはいつか散る。出会いと別れの4月。長谷川氏の息吹が、まだ色濃く残る山梨学院の監督職には、過去にカマタマーレ讃岐などで監督経験がある車いすの指導者・羽中田昌氏(57)が就く。始まりがあれば、終わりがある。

長谷川氏は、新たな挑戦へと、崖を登り始めた。

「いつかは、チャンスがあれば、プロのチームを指揮してみたい思いもあるし、情熱を持って、チャレンジしていくような、エネルギーを持っている指導者をつくっていきたい」。

青森山田戦で指示を出す山梨学院・長谷川大監督(左)=21年1月11日

青森山田戦で指示を出す山梨学院・長谷川大監督(左)=21年1月11日

もう1度、花を咲かす-。そんな思いで、門をたたいた。22年度S級コーチ養成講習会。20名の受講者は、Jクラブのコーチなどが大半を占めた。高校の監督は長谷川氏1人。年齢構成は下は36歳から、上は48歳。最年長の同氏は「もう1回、挑戦する年」。10歳以上離れた受講者とともに、今月から始まった講義でペンを走らす。

難関のS級ライセンス。同資格を取得すれば、Jリーグの監督、女子のWEリーグはもちろん、日本代表の監督だって務めることが可能となる。とは言え、簡単なものではない。20名の受講者も、多くの希望者から、選考を勝ち抜いた猛者たち。

果てしない道のり。日本サッカー協会(JFA)によれば、今後の予定は以下のようになっている。4月から12月までの8カ月間は12回に渡る国内短期講習、国内集中講習。その後は、指導実践試験が待ち受ける。講習会終了後は、翌年10月までの間に、海外クラブやJクラブで3週間に及ぶインターンシップを体験。実地研修を行い、そのリポートを提出する。

全カリキュラムを修了し、筆記試験、指導実践、好投試験、研修リポートにおいて、全てを合格した後、JFA技術委員会で審査後、ライセンスを認定する。

費用もかかる。S級コーチ養成講習会のコース受講料は33万円(税込)。これは国内短期講習、指導実践試験での宿泊費、検定費用が含まれている。ただし、会場までの交通費、集中講習期間中の宿泊費、インターンシップに係る費用は入っていない。そんなこと、関係なかった。