為末大氏なら箱根駅伝の区間を短くする 育成年代と大人に同じルールが必要なのか

変わりつつあるスポーツ界は、時代とともにどうあるべきか? スポーツや社会問題に詳しい元陸上の五輪選手、為末大氏(44)に話を聞いた。

陸上

22年4月10日、完全試合を達成し笑顔を見せるロッテ佐々木朗希

22年4月10日、完全試合を達成し笑顔を見せるロッテ佐々木朗希

佐々木朗希を登板させなかった指導者

スポーツ界は選手保護の意識が強まっている。

今シーズンのプロ野球では、完全試合を達成したロッテ佐々木朗希投手の活躍が話題となっているが、同時に、岩手・大船渡高時代に連戦の疲労を考慮し、県大会の決勝に登板させなかった指導者の判断が、改めて脚光を浴びている。

育成年代の選手について、故障を未然に防ぐために活動制限は必要なのか? 為末氏は持論をこう展開した。

「ある程度、制限した方がいい派です。できたら複数競技を若い時に経験し、高校生くらいまでは練習時間を制限した方がいい。それで高校時代に限っては競技力が若干落ちる可能性はありますがそれでも将来を考えると制限をした方良いと思います。私自身の経験では、練習時間に制限がかかると、本当に大事な練習は何かと考えるようになる。それが重要です」

高校野球で言えば、甲子園という大きな目標がある。そこで自分が納得できるまでやりたいという考えは根強い。

「その気持ちはよくわかります。燃え尽きるために長時間練習を行うと、10人中9人は壊れるかもしれないけど、耐え抜いた1人は伸びるかもしれない。そしてその子がスターになるかもしれません。しかし、教育のための大会と思いっきり前に出している以上は一部の子供だけではなく、全ての子供の成長のために良い仕組みにするべきです。その観点から私は練習時間に制限をかけ、高校生らしいことをもっとやるべきだと思います」

さらに「失敗の本質」という本を例にして説明する。1984年(昭59)に刊行されたこの本は、第2次世界大戦における日本軍の失敗を、社会科学の観点からに何が間違っていたのか分析したもの。敗北の実態を明らかにすることで、組織論を考察している。2011年東日本大震災の後のトラブルの際にも、話題となった一冊である。

「一番印象的だったのはインパール作戦で、兵站(食料燃料など作戦実行に必要なもの)が足りないということがわかっていたのですが、それは現地調達だということで作戦は決行されるんです。こうして足りないはずなのに現地調達という理屈でどんどんやることが増えていってしまうのが日本の癖だと思います。スポーツでは現地調達の代わりに気合と根性と言いますが」

為末氏は近年のプロ野球のオールスター出場選手で、甲子園未出場選手の割合が多いことにも注目している。「仮説ですけど」と断った上でこう続けた。