【カナリア軍団の挑戦】帝京10個目の星へ 最後のV主将が名門を変えた〈1〉

高校サッカー界の超名門チーム、帝京(東京)が長い低迷から抜け出した。高校選手権で戦後最多タイの6回、夏の高校総体と合わせて9回の日本一に輝く「カナリア軍団」は、今夏の総体で準優勝。13年ぶりの選手権出場、さらに31年ぶりの優勝も見えてきた。復活への戦いは、東京都予選初戦となる15日の3回戦(対保善)でスタート。高校サッカー取材歴40年、帝京の黄金時代を知る荻島弘一記者が密着取材する。第1回。

サッカー

〈サッカー取材歴40年荻島記者が密着〉

プリンスリーグ関東を戦う帝京メンバー

プリンスリーグ関東を戦う帝京メンバー

選手権優勝6度、高校サッカーの代名詞

小気味いいパスが、人工芝のピッチに通る。前線の選手にサイドのDFが加わり、相手守備の穴を突く。

東京・足立区の帝京大グループ千住グラウンド、U-18プリンスリーグ関東1部を戦う帝京は強かった。

来季のプレミアリーグ昇格を目指し、今季15試合(全18試合)を終えて9勝2分4敗(勝ち点29)。リーグ2位に付けている。

伝統のカナリア色のユニホーム、胸には日本一の回数を表す9個の星。選手たちには今、10個目の星が見えている。

かつて、帝京は高校サッカーの代名詞だった。開催地が大阪だった1974年度に初優勝。首都圏開催となって以降は毎年のように大会を沸かせ、77、79、83、84年度と優勝を重ねた。

第70回全国高校選手権決勝 帝京対四日市中央工 四日市中央工との同時優勝を果たした帝京イレブン。後列中央が松波正信。後列左端から阿部敏之、現監督の日比威

第70回全国高校選手権決勝 帝京対四日市中央工 四日市中央工との同時優勝を果たした帝京イレブン。後列中央が松波正信。後列左端から阿部敏之、現監督の日比威

人気は圧倒的で、観客動員にも直結。大会関係者も陰で勝ち上がりを望んでいた。

堅守からの速い攻め、勝負強さも抜群だった。全国から選手が集まり、多くの日本代表選手も輩出した。

92年の正月、日本サッカーがJリーグ発足へ転換期を迎える中、6度目の大会制覇。四日市中央工(三重)との同時優勝だった。

ところが、この年を最後に優勝から遠ざかる。Jリーグ発足で選手はJクラブの下部組織に流れ、選手の獲得にも苦しんだ。

1984年入社。スポーツ部でサッカー、五輪などを取材し、1996年からデスク、日刊スポーツ出版社編集長を経て2005年に編集委員として現場に復帰。