重圧で潰れかけた不破聖衣来 姉や仲間の支えで気付けた「99秒後れの区間賞」の価値

2024年パリ・オリンピック(五輪)を目指す陸上女子長距離界のホープ、不破聖衣来(19=拓殖大2年)に笑顔が戻った。10月30日に行われた全日本大学女子駅伝(仙台市、6区間38・1キロ)では5区を走り、2年連続の区間賞。22年は右アキレス腱(けん)痛や貧血の影響で不調が続いていたが、杜(もり)の都で走る楽しさをかみしめた。周囲の支えとともに苦しい時期を乗り越えたことで、見失っていた初心を取り戻した。

陸上

10月30日全日本大学女子駅伝、大東文化大5区山賀瑞穂(左)を抜き、4位に浮上する拓大5区・不破聖衣来

10月30日全日本大学女子駅伝、大東文化大5区山賀瑞穂(左)を抜き、4位に浮上する拓大5区・不破聖衣来

全日本大学女子駅伝、シード権獲得に貢献

1年前のタイムより、1分39秒の後れを取った。それなのに、表情は晴れ晴れとしていた。

「沿道から声援が聞こえてきて、楽しく走れました」

はずむような声を出したのは拓大の不破聖衣来。レース直後、疲労を感じさせない表情でそう言った。

10月30日の全日本大学女子駅伝。青空が広がった仙台の街を、不破は笑顔で駆け抜けた。

最長5区(9・2キロ)を29分39秒で走り、区間賞を受賞。チームは5位に入り、2年連続のシード権獲得に貢献した。

ただ、笑みがあふれたのは、結果に対してではない。見失いかけていた価値に気付くことができたからこそ、表情は晴れた。

1年前。21年の全日本大学女子駅伝。不破の快走は、ファンの度肝を抜いた。

美しいフォームで、ひたすら前を目がけて走る。

エースが集う5区で6人抜きを達成し、従来の区間記録を1分14秒も更新。9・2キロを28分00秒で走り、チームを史上初の3位表彰台に導いた。テレビの解説を務めた高橋尚子さんは「スター誕生」と賛辞を惜しまなかった。

陸上界に現れたニューヒロイン。快挙は続いた。

同年12月11日の競技会で、1万メートル日本歴代2位となる30分45秒21をマークして優勝(22年11月現在は3位)。年をまたぎ、22年1月16日の全国都道府県対抗女子駅伝では、4区(4・0キロ)で13人抜きをして区間新記録を更新した。

人々の関心は高まった。親しみが込められた「不破ちゃん」の愛称は、世間に広く浸透するようになった。

次はどんな記録を打ち立てるのか--。

しかし、日ごとにふくらむ期待感は、大学1年生の不破に重圧となってのしかかった。

4月の日本学生個人選手権、5000メートルで序盤から先頭集団に離される不破

4月の日本学生個人選手権、5000メートルで序盤から先頭集団に離される不破

度重なる故障 最下位、欠場…世陸出場も消滅

今年1月の全国都道府県対抗女子駅伝後に右アキレス腱(けん)痛が判明。3月末までは歩行もままならなくなった。

4月17日には、日本学生個人選手権の5000メートルに出場したが、1キロ3分30秒のペースで走り、最下位に終わった。

5月7日には、同日の日本選手権1万メートルの欠場を発表。股関節痛による調整不足が理由だった。これにより、3位以内で確定するはずだった7月の世界選手権(米オレゴン州)出場は消滅した。

全日本大学女子駅伝から半年。不破の走りは影を潜めていた。

思うように走ることができない日々。それでも、報道陣からは取材を求められる。

こう思う時もあった。

「不調なのに取材に来ていただいたりもして、なんで来るんだろうって」

プレッシャーで、19歳の心は押しつぶされそうになっていた。

下を向きかけた時、手を差し伸べてくれた人がいた。