【朝乃山を追う:23年初場所編】初黒星に沈む息子 亡き父に代わりゲキを送った母

大相撲の大関経験者の朝乃山(28=高砂)が、23年1月の初場所(東京・両国国技館)で十両優勝を勝ち取った。復帰4場所目は初日から10連勝を飾るなど14勝1敗の文句なしの好成績。支えてくれた人たちの存在があったからこそかなえられた結果だった。21年5月に新型コロナウイルス感染対策ガイドラインの違反。6場所の出場停止処分を経て、三段目から再出発した朝乃山のドキュメント。今回は初場所を振り返る。

大相撲

<西十両12枚目:14勝1敗優勝>

初日 貴健斗(下)を突き落としで破る

初日 貴健斗(下)を突き落としで破る

序盤から強さ見せつけ5連勝

強い、さすがは大関経験者だ。西十両12枚目として臨んだ初場所で、朝乃山は序盤から他の力士との違いを見せつけた。

初日に貴健斗(常盤山)を突き落としで下し、大関だった21年5月19日の夏場所11日目(隆の勝をすくい投げを退けた)以来となる関取での勝利。大銀杏(おおいちょう)に黒の締め込みを着用して堂々とした姿で、「また15日間相撲を取らせてもらうことに感謝の気持ちを忘れず土俵に上がりました」と万感の思いを込めた。

再十両場所で好スタートを切り、勢いに乗った。2日目に千代栄(九重)に突き出しで下し、3日目の白鷹山(高田川)戦では今場所で初めて得意の右四つから寄り切った。

「前に出て自分の相撲が取れている」と手応えを実感。その後も4日目に對馬洋(境川)、5日目に魁勝(浅香山)も難なく退け、序盤戦を5戦全勝とした。

初日(1勝)

〇朝乃山 突き落とし 貴健斗

二日目(2勝)

〇朝乃山 突き出し 千代栄

三日目(3勝)

〇朝乃山 寄り切り 白鷹山

四日目(4勝)

〇朝乃山 寄り切り 對馬洋

五日目(5勝)

〇朝乃山 あびせ倒し 魁勝

6日目 狼雅(右)を寄り切りで破る

6日目 狼雅(右)を寄り切りで破る

プレッシャーにも動じず白星重ね

序盤戦を終えた朝乃山の取組は、全く危なげのないものだった。

21年5月、繰り返し飲食店に出入りしたことが発覚。新型コロナウイルス感染対策ガイドラインの違反で、同年7月の名古屋場所から6場所の出場停止処分(50%の減給6カ月間も)を受けた。

22年7月の名古屋場所で西三段目22枚目で復帰。そこから順調に番付を上げ、4場所目で再十両。1年ぶりに関取に戻った場所で、周りから受けるプレッシャーにも全く動じていなかった。場所前の取材でも、「新十両に上がったときとはだいぶ顔ぶれも違うので、当たるのが楽しみです」と心待ちにしていた。

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