【失敗から再起するには〈下〉】悪の権化扱い・・・レスリング名将が頼った心の拠り所

レスリングでオリンピック(五輪)の金メダルを量産した至学館大監督の栄和人氏(64)。2018年1月に勃発したパワハラ問題で、栄光から奈落の底に突き落とされました。一部報道は過熱。悪の権化のようにたたかれ、人格を否定され、表舞台から去りました。まさかの人生の暗転。その時、何を思い、どう心に折り合いをつけて、人生の再スタートを切ったのか。栄氏に聞きました。2回連載の下編です。

その他スポーツ

 
 
 
 
パリ五輪前の昨年2月、出稽古に来た金メダリストたち 後列左から女子53キロ級の藤波朱理、78キロ級の鏡優翔、62キロ級元木咲良、57キロ級桜井つぐみ 前列中央が栄和人氏

パリ五輪前の昨年2月、出稽古に来た金メダリストたち 後列左から女子53キロ級の藤波朱理、78キロ級の鏡優翔、62キロ級元木咲良、57キロ級桜井つぐみ 前列中央が栄和人氏

テレビ、SNS・・・壊れた心

どうやって生きていけばいいのか。先の展望が開けない。人生にはそんな絶望が付きものだ。しかし、人生は続く。生きていかなければならない。どう心に折り合いをつけるか。7年前、パワハラ問題で窮地に陥った至学館大レスリング部監督の栄和人氏(64)は自らの原点に立ち返り、身近な人を支えにすることで救われたと振り返る。

栄氏は2018年1月、教え子でオリンピック(五輪)4連覇を果たした伊調馨にパワハラを繰り返したとして、レスリング関係者から内閣府に告発状が出された。2018年3月、日本レスリング協会の第三者委員会にパワハラは認定されたが、その告発者サイドの主張がすべて認められたわけではない。

それでも、一部報道では「絶対悪」と人格を否定され続けた。あるテレビ局からは月曜日から金曜日まで昼から2つの情報番組の4時間の枠で徹底批判された。周囲から止められても、気になってテレビを見てしまう。SNSのコメントも読んでしまうから、余計にメンタルは壊れていく。医者からは「うつ病になりかけている」と警告され、飲み薬を渡された。

本文残り80% (2289文字/2875文字)

スポーツ

田口潤Jun Taguchi

1972年1月、東京都墨田区生まれ。王貞治さんが育った地域で、小学校の頃は王貞治杯に出場。大学では野球サークルで、野球部希望も入社当初は競馬などを扱うレース部。約8カ月でクビになり、野球以外を扱うスポーツ部。五輪競技、相撲、サッカー、プロレス、格闘技、ボクシング、ゴルフとすべての競技を担当。五輪は98年長野、04年アテネ、14年ソチ、16年リオデジャネイロ大会を取材。