エンジン抽選に左右されるため、ボート選手にとって、ファンの信頼を勝ち取ることは容易ではない。そんな条件の中でも、昨年の賞金王・峰竜太のように、いいエンジンのときに圧倒的なパワーで活躍し、凡機を引いてもしっかり調整して着をまとめる。これが超一流選手の必須条件だ。

木下翔太(2019年9月9日撮影)
木下翔太(2019年9月9日撮影)

若手では木下翔太(28=大阪)が、最もこの条件に当てはまる。今年6月多摩川のグラチャンでSG初優出(6着)。今年4~9月の半年間で、賞典レースに進出できなかったのは6月桐生周年と7月常滑オーシャンカップのみ。優勝は3回を数え、安定感と勝負強さを兼ね備えている。

「ターンで何かをつかんだとかではないんですよ。前検で悪くても、乗り心地だけしっかりさせていく。あまり高望みせず、微調整でいっているのがいいのかもしれない。精神的な面も大きい」と分析する。乗り心地さえ良ければ着を拾えるのは、旋回力が向上しているからこそ。“ボートレーサーとして成功する”という強い意志が、成長を加速させている。

SG初優出の6月多摩川で、私は木下の優勝原稿を用意していた。「優勝の記者会見で『母親、奥さん、娘さんに優勝賞金で何を買いますか?』と聞こうと思っていた」と本人に明かすと、「何を買いましょうか。近い将来、そういう取材をしてもらえるように頑張ります」と笑った。木下は22日開幕の児島SGダービーに出場する。優勝インタビューをぜひ見たい。