大リーグで10月に活躍する選手をミスターオクトーバーとするなら、さしずめ競輪界では9月にすごい実績を残す神山雄一郎(50=栃木)をミスターセプテンバーと呼んでみたい。その神山が、大好きな平塚バンクで復権への思いを強くしている。

平塚F1へ意気込む神山雄一郎
平塚F1へ意気込む神山雄一郎

27日が初日の平塚F1で、前検日には余裕たっぷりの立ち振る舞いを見せた。すれ違うなじみの選手に笑顔で話しかけ、記者からファンサービス用のサインを頼まれると、二つ返事でOKして色紙にペンを走らせた。

しかし、記者から状態を問われると態度が一変。表情を引き締めて「(着順の)数字しか見ていなければ分からないだろうけど、状態は良くなっている。手応えがある」と話した。ほおはこけている。「体が重く感じて、夏に体重を5キロ減らした」。踏み出しを鋭くしようと懸命だ。

花粉症に悩まされる春先から夏場と違い、例年9月になると体に切れが出てくる。93年から15年まで9月に開催されたオールスターを5度制覇した。井上茂徳氏と滝沢正光氏に次ぐG1グランドスラマーへの1歩は、1993年の宇都宮オールスターだった。そして平塚バンクとの縁も深い。「思い出が多い」と振り返るように、88年にデビューしてG1初出走は平塚・日本選手権だった。97年にオールスターを制し、通算400、500、600勝のメモリアルは偶然にも平塚で決めた。

無類の自転車好き。神山雄一郎が愛車を丹念に整備する
無類の自転車好き。神山雄一郎が愛車を丹念に整備する

落車してデビュー初の鎖骨骨折を負ったり、KEIRINグランプリで敗れて敢闘門のそばで涙したこともある。

この夏には憧れだった鈴木誠氏や、何度もタッグを組んだ戸辺英雄氏が引退。「2人ともケガや体調が悪かったり。もっと一緒に走りたかった」とさびしさを感じた。2日には、追い込みのこつを聞いた伊藤公人氏が死去。「伊藤さんにはかなりお世話になった。乗り方やフォームを教えてもらった」。しかし、戦いを前にセンチメンタルな思いを封じる。「あと4回、G1を勝ちたいからね。優勝回数が20回になれば、いい区切りでしょ」。限界は感じず、引退は頭にない。もう1度、頂点へ。神山はただただ先へ進む。【野島成浩】