トークショーで立川吉幸師匠の質問に答える戸辺英雄氏(右)(2018年11月12日撮影)
トークショーで立川吉幸師匠の質問に答える戸辺英雄氏(右)(2018年11月12日撮影)

取手の開設記念3日目の12日、同競輪場で戸辺英雄氏(55)のトークショーがあり、多くのファンが戸辺氏のひと言ひと言に耳を傾けていた。83年4月デビューの戸辺氏は長くトップのS級に在籍した。特別競輪で10回決勝に進出し、7回表彰台(2着2回、3着5回)に上がった実績がある。生涯獲得賞金は約10億円でレジェンドのひとり。私たち記者の質問にいつも丁寧に答えてくれた。スマートでかっこ良かった。

今年4月に心筋梗塞を発症したことで、8月に35年の現役生活にピリオドを打った。「けがなら何度も復帰してきた。医者からは復帰に関して大丈夫と言われましたが、目に見えない心臓のことなので、引退を決意しました」と理由を明かした。

戸辺氏は栃茨ラインをつくった選手のひとり。盟友・神山雄一郎との鉄壁ラインは競輪ファンの記憶に残っている。無冠に終わったのは「自分に甘さがあったから」と振り返る。

地元記念も最後までとれなかった。「以前は6月にあり、梅雨の時期は成績があまり良くなくて」と残念がっていた。

トークショーの中盤から後閑信一氏(右)が入り、軽妙なトークにファンから笑い声が上がる(2018年11月12日撮影)
トークショーの中盤から後閑信一氏(右)が入り、軽妙なトークにファンから笑い声が上がる(2018年11月12日撮影)

トークショーの中盤に後閑信一氏が加わり、「戸辺さんが後ろについたら、黙って先行してました。今の若手は!」と熱い口調に会場のファンはどっと沸いた。戸辺氏も「後閑には静岡記念をとらせてもらって」と感謝していた。このレースは1996年2月12日にあった。吉岡稔真氏が人気を背負っていたが、後閑氏がまくり、番手の戸辺氏が直線で伸びて差し切った。4年半ぶりの記念優勝だった。当時、私は取材していて、このシーンを思い出していた。

戸辺氏は「これからは茨城の若手を応援してください」とあいさつ。ファンから温かい拍手を浴びていた。茨城は若手が成長し一大勢力になりつつある。戸辺氏の期待に、若手がきっと応えてくれる。【田中聖二】