稲垣裕之は3年ぶりのグランプリ出場を胸に強く誓った(撮影・松井律)
稲垣裕之は3年ぶりのグランプリ出場を胸に強く誓った(撮影・松井律)

昨年の12月30日、静岡競輪場の来賓席に稲垣裕之(41=京都)の姿があった。その理由は2つ。

1つはKEIRINグランプリに出場する同郷の村上義弘、博幸を応援するため。もう1つは、その光景を目に焼き付け、自分を奮い立たせるためだった。

「昨年は自分の選手生活を振り返っても本当にふがいない1年だった。最後にグランプリを生で観戦して、今年はまた自分もあの場に立とうと強く思いました」

昨年は3月小倉の落車から成績が下降線をたどった。なかなか心と体がかみ合わず、2度も失格するなど、完全にリズムを崩してしまった。

「ケガの治し方は過去の経験で分かっている。でも、復帰したら今度は少しレース形態が変わっていて、うまく対応が出来なかったんです」

大ギアが規制されても、競輪界のスピード化は進んでいる。ましてトップクラスになれば、コンマ数秒の判断の遅れが命取りになる。稲垣ほどの選手でも対応は容易ではないのだ。

それでも10月あたりから復調の兆しが見え始め、今年は立川、和歌山と好スタートを切っている。高みを知っている男は、簡単には終わらない。【松井律】