選手の取材中に良く耳にする「セッティングが出た」という言葉。

ハンドルやサドルの位置、ギアの大小の組み合わせ、選手たちはそれらを微調整しながらフレームと自分の体に合った最良のポジションを模索していく。中にはセッティングを出すのが得意な選手がいて、同地区の選手にアドバイスを求められることが多い。

長正路樹のセッティング調整は達人技
長正路樹のセッティング調整は達人技

長正路樹(53=東京)がその1人だ。長期にわたりS1班で活躍した佐久間仙行氏(17年1月引退)は、現役時代に「長さんにセッティングを出してもらってきた」と頻繁に口にしていた。

長正路の持論は「筋力でカバーできる若いうちはセッティングなんてどうだっていい。でも、ベテランになってきたり、パワーで劣る女子などは、ミリ単位どころか、ミリ以下の違いが重要になってくる」。ガールズケイリンの奥井迪、小林莉子、増茂るるこなどが慕って来るのは、そこを理解しているからだろう。

「一番に見るのはバランス。ストレスのかからない状態で乗れているかですね」。体に合わない自転車に乗っていれば、力は伝わらず、腰を痛めることもある。制止している状態ではなく、支えている部分も限られているから奥が深い。

1月27~29日に開催された防府では、小林莉子が優勝。増茂るるこは予選で2連勝していた。もちろん本人たちの努力の結晶だが、セッティングが出ていることでの自信は必要不可欠だったと思う。

【松井律】