競輪、楽しんでいますか?

24日に終了した西武園F1は、A級が中曽直彦(46)、S級が中村浩士(41)の、ともに千葉勢の優勝で幕を閉じた。中曽の優勝は16年10月の、何と西武園以来。バンクとの相性がいいというのはこのことだろう。予選ではまくりも出ており、日々の地道な努力に勝利の女神がほほ笑んだ形だ。おめでとう!

A級優勝を決めた中曽直彦
A級優勝を決めた中曽直彦
今年初優勝を飾り、地元松戸で行われる日本選手権(ダービー)に弾みをつけた中村浩士
今年初優勝を飾り、地元松戸で行われる日本選手権(ダービー)に弾みをつけた中村浩士

一方の中村は直前に松戸競輪場で行われた、日本選手権(ダービー、松戸)に向けた地元支部合宿をまとめ、その後にはファンイベントもこなした中での今年初優勝。公務に忙しい中、その差し足は鋭さを増すばかりだった。さすが!

その中村を先導した弟子の根田空史(30)の仕上がりも目を引いた。連日“相手も強風も関係なし”といった圧倒的な先行力を披露し、こちらもダービーに向けての仕上がりの良さが光った。同期同学年の脇本雄太に追いつけ追い越せの意気込みで練習、そして自転車の改良を続けており、ダービー直前には「脇本仕様」の新フレームも出来上がるという。本当に楽しみだ。

ダービーに向け、抜群の仕上がりを見せる根田空史
ダービーに向け、抜群の仕上がりを見せる根田空史

今開催のオープニングレースを制したのは、当地初出走の藤井準也(24=岐阜)だった。実はこれが通算100勝目。デビュー約5年での大台到達に「ちょっと時間がかかりましたね。チャレンジの時は結構勝てましたが、1、2班に上がってからはなかなか勝てなくて…。次は200勝目指して頑張ります」と静かに闘志を燃やしていた。頑張れ!

デビュー通算100勝を祝福されて照れ笑いを浮かべる藤井準也
デビュー通算100勝を祝福されて照れ笑いを浮かべる藤井準也

そのレースで2着に入った大ベテランの中沢孝之(53=大阪)が興味深い話をしてくれた。一昨年11月和歌山での落車で、肋骨(ろっこつ)、鎖骨など、自身初めてとなる1度に9カ所の骨折という大けがを負った。「実はあの日は準決やったんですけど、次のレースにあの山崎賢人君がいたんですよ。彼はこれから絶対に強くなるから、ぜひ(翌日の)決勝で一緒に走っておきたいと思って(軽くするために)プロテクターをつけずにレースに行ったら…。20日間病院のベッドに寝たきりの生活で、痛みもすごかった。選手を辞めようかなと思ったぐらいですわ」と振り返る。

プロテクターの必要性を説く中沢孝之
プロテクターの必要性を説く中沢孝之

そして「最近は若い人を中心にプロテクターをつけずに走る人が多くなっているけど、落車で大けがをすれば、自分はもちろん、家族も大変。選手が長期間休めば、その走りを楽しみにしているファンもガッカリさせる。それに共済会だって(資金的に)厳しくなる。だから僕は、JKAが選手に最低限のプロテクターの着用を義務づけた方がいいと思っています。どうでしょうかね?」。

動きやすくスピードが出るなど、プロテクターをつけずに走るメリットはもちろんある。昔に比べて競輪がヨコよりタテの競走形態になってきていることも確かだ。ただ、常に落車の危険が伴う競技である以上、中沢の言うことも一理ある。考えさせられる提言だった。【栗田文人】