リスタートへ意気込む福田礼佳
リスタートへ意気込む福田礼佳

前期に、すんでのところで代謝を免れた福田礼佳(23=栃木)が調子を上げている。1年を6カ月で区切る1期の得点が3期以上も47点未満になり、選手登録を抹消されかけた頃とは別人。力強い。残暑の9月1日、宇都宮バンクでその練習風景を見た。

福田礼佳が宇都宮バンクを駆け抜ける
福田礼佳が宇都宮バンクを駆け抜ける

午前11時半過ぎに男子選手が次々とバンクから引き揚げても、福田はペダルをこいでいた。熱風を切り裂く。カントがきついコーナーの上部から、山おろしを利かせて直線はスピードに乗せてもがく。これを繰り返して、バンクに隣接する練習部屋に戻ると「あーっ、きつい」とひと息ついた。その言葉とは裏腹に、表情は充実感に満ちているよう。「同じことは繰り返さない」。きっぱりと言った。目元はきりりっ。勝負師の顔だった。

2コーナーから山おろしで直線に向かう福田礼佳
2コーナーから山おろしで直線に向かう福田礼佳

前期終盤は体調不良を理由に4度も欠場し、最終戦だった6月小倉最終日は当日欠場した。それを疑問視するファンや関係者の思いを「見ちゃうんですよねぇ」と、ネットやSNSなどを通じて感じ取っていた。「暴飲暴食をしたときもあった」。心が乱れたが、ミクロの差で選手を続けられることになり、気持ちが高まった。父祐治氏(54期・引退)はそろってS級で戦った4兄弟の長男で、祖母は女子競輪の選手。いとこの福田拓也(100期)と福田滉(115期)は現役で、競輪一家で生まれ育った自負がある。

自身への悪評を振り払う気持ちで臨んだ今期は、4場所走って7月青森で決勝進出したほか確定板にも3度載り、競走得点も48点台になった。

バンク練習で顔を合わせる宮原貴之(67期)は、4度優勝している土屋珠里の師であり、時には青木美優にもアドバイスするなどガールズケイリンをよく知る。ずっと福田を気にかけており「礼佳は、よく練習するようになった。バンクに来る回数が増えたし、珠里より練習しているかも。いつも明るい礼佳が、選手を続けられて良かった」と話した。

競輪場に隣接する道場で整備する福田礼佳
競輪場に隣接する道場で整備する福田礼佳

7月高知予1(6着)と大垣一般(4着)は前受けから先行した。直線まで逃げ粘った高知では相手から驚きの声が上がり、それも耳に心地よかった。「大垣はSを取って、そのまま打鐘とホーム、バックを先頭で通過。そんなの記憶にない。一瞬、逃げ切れるかと夢を見た。今は体重がプラス6キロ」。好内容のレースにパワーアップを実感し、手応えもつかんだ。7月には、作新学院高の自転車部でともに汗を流した坂井洋がデビューした。115期在校1位からの助言を素直に聞く。「坂井は選手としては後輩だけど、ウエートトレーニングを教えてもらった。体の使い方がちょっと分かったかも。感謝」。

福田礼佳(左)が宮原貴之と近況を話し合う
福田礼佳(左)が宮原貴之と近況を話し合う

もちろん、本当の戦いはこれからだ。ガールズ4期生としてデビューし、丸4年の経験があっても組み立てにひと工夫を考える。「強い人の後ろに付いていって勝負。でも、今は展開が読みづらい。新人(116期)が、デビューした頃と違う走りをする。今度の伊東(3~5日)では久米詩さんがそうだもん。注目されていると分かったのか、先行の仕方が変わった」。自転車を降りても、ガールズへ思いを巡らせる福田は、実に楽しそうだった。【野島成浩】