競輪界の最高峰レース、KEIRINグランプリ2019(12月30日、立川)が近づいてきた。夢舞台に挑むのは、中川誠一郎(40=熊本)脇本雄太(30=福井)新田祐大(33=福島)村上博幸(40=京都)松浦悠士(29=広島)清水裕友(25=山口)佐藤慎太郎(43=福島)平原康多(37=埼玉)郡司浩平(29=神奈川)の9選手。10年立川を制している村上以外の選手が勝てば初制覇となる。中でも7年連続10度目で、メンバー最多出場になる平原は、より力が入りそうだ。

大宮競輪場の東門で専門紙を販売する福谷信一さんが平原康多に1評を投じる
大宮競輪場の東門で専門紙を販売する福谷信一さんが平原康多に1評を投じる

大宮F2(11月28~30日)を取材していたとき、今回の「グランプリで誰を応援!?」を思いついた。えっ、埼玉県で集計すれば? 結果は想像できても進めます。

大宮駅から競輪場への無料バスに乗ると、到着するのが東門の入場口。ここで29日午後に、9選手の写真を張ったボードを持ってスタートした。

最初にお願いしたのは、主に専門紙「赤競」を販売して21年目の福谷信一さん(60)。「応援? そりゃ、平原でしょ。競輪界に貢献してきて、まだ勝ってないから。年齢的に最後のチャンスかも。他より多く出場した経験と、今年は初の単騎でおもしろい」。平原に力強く赤丸を記していた。

西門で専門紙を販売する女性は平原康多を応援
西門で専門紙を販売する女性は平原康多を応援

場内でファンに声をかけていく。さいたま市の29歳の女性(29)は、ひいきの選手が出走するときに競輪場を訪れるという。この日は息子2人とお母さん(55)を連れだっていた。お母さんが「やっぱり平原さん」と言うと、女性は「りりしく、格好いい」と郡司を推す。

さいたま市に在住で息子2人と競輪場を訪れた主婦(29・左)と、その母はそれぞれ郡司浩平と平原康多を応援する
さいたま市に在住で息子2人と競輪場を訪れた主婦(29・左)と、その母はそれぞれ郡司浩平と平原康多を応援する

男性が集まって車券を検討するところにお邪魔した。さいたま市の73歳の方は「競輪はゴール前の逆転があってすごいスリル。平原がそれを見せる」。他の意見は「脇本も好きだけどね、やっぱり平原。昔からいい男。オレの年齢は内緒」(埼玉県)。「同じ埼玉で平原。埼玉はグランプリを勝ったのは太田真一が最初で最後。頑張れ」(36=埼玉県)。

新旧ナショナルチーム勢を応援する声も強い。「脇本の強さは問答無用」(青森市)。「五輪代表を目指す新田を応援。脇本より競輪の経験がある」(77=さいたま市)。「単騎でG1を2度も勝ってる中川」(51=さいたま市)。

新鋭に期待するファンも少なくない。「オレは松浦。平原を応援したいけど、競輪祭で清水に飛ばされた。それで松浦が優勝。今度もそうなる?」(69=川越市)。「強さと勢いで清水」(男性)。

『予想屋ギャンブラー』木村安記さんが平原康多に1票を投じる
『予想屋ギャンブラー』木村安記さんが平原康多に1票を投じる

太く甲高い声が響き、その元には人だかりができていた。声の主は「予想屋ギャンブラー」木村安記さん(47)だった。大宮と西武園でファンに予想を届けて16年目。「そりゃ、平原です。デビューしてすぐからスピード感があった。格好良くてスター性がある。埼玉を背負って立つ存在」。話は展開想定に移る。「脇本は前の方から引いてカマシ。力なら脇本だけど、グランプリは初出場Vがあるから個人的に松浦や郡司も気になる。新田は調子が分からないが、単騎3人の動きで中団がもつれるとチャンス」。テンポがいい口上に、居合わせたファンもうなずく。

大宮競輪場の選手食堂。従事員は平原康多や佐藤慎太郎を応援する
大宮競輪場の選手食堂。従事員は平原康多や佐藤慎太郎を応援する
大宮競輪の開催指導員・井上善裕(左)と選手OBの田淵浩一さん(中央)、選手会埼玉支部長の白岩大助がそろって平原康多を応援する
大宮競輪の開催指導員・井上善裕(左)と選手OBの田淵浩一さん(中央)、選手会埼玉支部長の白岩大助がそろって平原康多を応援する

開催指導員室には平原をよく知る3人が顔をそろえていた。選手会埼玉支部長の白岩大助(40=埼玉)と開催指導員の井上善裕(44=埼玉)、S級経験者で現在は大宮と西武園で予想会を開く田淵浩一さん(55=埼玉、55期引退)。白岩と井上は「平原のすごさはトップの地位にいながら、強い弱い関係なく、多くの選手から意見を聞くこと。そして実際にその練習法を取り入れたり、フォームを変えてみたり。常にいろんなことに挑戦する」と口をそろえた。田淵さんは「平原君がまだA級のときに自分が埼玉支部の常任幹事だったこともあり、競輪界のいろんなことを聞いてきた。業界をいろんな角度から見渡している。こちらもすごくためになった」とエピソードを明かしてくれた。

近畿の古豪・大井啓世は村上博幸を応援する
近畿の古豪・大井啓世は村上博幸を応援する

近畿の古豪・大井啓世(54=奈良)にも聞いてみた。自らは03年がG1宮記念杯で決勝進出などキャリアハイ。一時は賞金ランクを7位まで上げたが、最終的には12位で夢舞台が遠のいた。「ベスト9に比べたら努力が足りなかったということ」とうなずいた。そして真っ先に村上博を指さした。「博幸だね。苦しんだ姿を知っているし、頑張って勝てば、今度はお兄ちゃん(義弘)の気合が入る。お兄ちゃんが近畿の若手の手本だからね」。

有効投票数は30。アンケートにご協力していただいた皆さま、ありがとうございました
有効投票数は30。アンケートにご協力していただいた皆さま、ありがとうございました

「有効投票数」は30で内訳は平原=17票、脇本=3票、新田、村上、松浦、清水=2票、佐藤、郡司=1票。アンケートにご協力していただいた皆さま、ありがとうございました。【野島成浩】