テープで何度も補修されたシューズに目を引かれた。いくら親から「物を大切にしなさい」と言われて育ってきても、令和の時代にここまでつぎはぎだらけで履く人は、そういないだろう。
このシューズの持ち主は、興呂木雄治(30=熊本)。愛用していた某メーカーが自転車用シューズの製産を中止してしまい、試行錯誤のまっただ中にいる。
「我慢していろいろなシューズを試しているけど、気に入るものがなかなかなくて…。これに代わるものが見つからないから捨てられずにいるんです」。
競輪選手にとってシューズはデリケートな商売道具。ちょっとしたズレや違和感があるだけで、力が出し切れなくなるのだ。
「僕なんてまだまだ。園田(匠)さんはもっとすごいのを履いていますよ。レベルが違います(笑い)」。
こう言って、3年も連れ添ってきたシューズを愛おしそうにバッグにしまった。興呂木のシューズ探しの旅は、しばらく続きそうだ。【松井律】