競輪、楽しんでいますか?

121期を早期卒業した中野慎詞(22=岩手)が12日の立川競輪で完全Vを飾り、デビュー通算9連勝としてA級2班特昇を決めた。

A級2班特昇を決めた121期早期卒業の中野慎詞
A級2班特昇を決めた121期早期卒業の中野慎詞

当然といえば当然の結果だが、特筆すべきは9勝中8勝がラインで決めているというところ。脚力断然の新人というのは得てして後ろをぶっちぎる競走が多くなりがちだが、中野の場合はそれがほとんどない。ファンにすれば買いやすい、番手や3番手の選手にしては走りやすい選手といっていいだろう。師匠で、子供のころからの憧れだったという佐藤友和の「自分勝手なレースをするのが競輪ではない」という教えを忠実に守っているようだ。

脚力も人間力も抜群の中野慎詞
脚力も人間力も抜群の中野慎詞

当方はデビュー場所だった1月の前橋でも取材する機会があったが、3場所目の今回、中野の大きな成長を感じた。当初から見せていた物おじしない性格に加え、今回は周りへの気遣いが光っていた。慣れもあるのだろうが、先輩選手、報道陣へのあいさつや対応に格段の進歩が見られ、わずか間に、自分に求められていることが分かってきたようだ。それでいて、フランクな質問にも笑顔で即答できる柔軟性と頭の回転の速さも併せ持つ。大げさに言えば、生まれながらのスターだ。

決勝で連係して2着だった平山優太(右)にサインをせがまれ「東北たましい」と書いた中野慎詞
決勝で連係して2着だった平山優太(右)にサインをせがまれ「東北たましい」と書いた中野慎詞

天気キャスターの貴島明日香さん推しは「(自分の)彼女も公認です」と笑わせる22歳。選手養成所入所時には、まことしやかに「中野浩一さん(日刊スポーツ評論家)の息子さんらしい」とうわさされたという逸材は、A級1、2班戦も明るく爽やかに9連勝でクリアすることだろう。そしてその先にはKEIRINグランプリやパリ五輪が待っている。【栗田文人】