今年最初のG1全日本選抜(取手)の開幕まで、16日であと4日に迫った。

いまだコロナ騒動の終焉(しゅうえん)は見えてこない。全国の競輪場でも最善の感染対策を行っているが、防ぎ切れずに各地で開催中止が続いている。

取手競輪場のある茨城県では、まん延防止警戒期間が4月10日まで延長された。今大会は何とか有観客開催にこぎつけたが、入場できるのは事前申し込み抽選による2400人限定。予定されていたイベントは、全て中止になった。

ここまで不安を抱えながら開催準備に奔走してきた日本競輪選手会茨城支部の戸辺裕将支部長(50)に話を聞いた。6月で任期が丸6年になるというベテラン支部長は、感染対策にも熱心に取り組む。「選手は、しっかり対策してくれているけど、どうしても気が抜けてしまう時もある。開催中、風呂場で話している選手に注意することもあります。理解してくれる人が多いけど、反応はさまざまですね」。自分たちの職場を守るために、率先して憎まれ役を買って出ている。

6月で任期が丸6年になるベテラン支部長の戸辺裕将
6月で任期が丸6年になるベテラン支部長の戸辺裕将

現役生活と支部長職の両立は簡単ではない。練習は公務の合間に行い、慢性的な腰や足のしびれの治療にも時間を割かれる。それでも「両立というよりは、別ものと思ってやっています」と泣き言は言わない。いや、言えないのだ。

そんな支部長へのご褒美なのか、前回の立川2日目に約3年ぶりの勝ち星を手に入れた。続く最終日も直線で突き抜け、連日の万車券提供となった。「新しい治療の効果が出てきたのかもしれないが、自分でもビックリしたし、本当にうれしかったですね」。

取手で全日本選抜が開催されるのは2度目。16年の前回大会は支部長としては駆け出しだった。「あの時の光景が忘れられません。お客さんは超満員。決勝の前には楽団によるファンファーレの生演奏。場内の一体感は本当に感動的でした」。当時と状況は一変してしまったが、来場してくれたファンには少しでもいい思い出を持ち帰ってもらいたい。

選手会ブースで選手とファンが交流するのはビッグレースの恒例行事。今回は直接の接触ができないため、グッズを購入したファンと選手がオンラインで会話をできるようにした。売り出し中の吉田有希をはじめ、人気選手が積極的に参加するという。

人気の吉田有希もオンライン握手会に参加予定だ
人気の吉田有希もオンライン握手会に参加予定だ

「支部長の立場としては、茨城から優勝者が出てほしい。でも、今は無事に開催が終わり、選手全員が元気に帰宅してもらえることを一番に願っています」。不自由さをカバーできるだけの知識と経験は積み上げた。支部長職6年の集大成を今大会にぶつける。【松井律】