SS賞の脇本雄太と新山響平のもがき合いは、見応え十分だった。しかし、私は5Rの柴崎淳と近藤龍徳のワンツーが非常に印象に残った。ゴールしてすぐ、タツが淳の背中に手を添える。それに応えるようにタツの肩を抱く淳。そして大きな声で「シャー!」とタツが叫ぶ。このご時世、密が罪だと言われても、この両者には関係なかった。安物の感動劇と言われようが、2人の気持ちは十分伝わった。吉田敏洋は「いらんプレッシャーを与えやがって」と苦虫をかみつぶした表情で、茶番をうらやましそうに見ていたらしい。

2予2着の吉田敏洋(手前)と、同レースで3着だった坂口晃輔
2予2着の吉田敏洋(手前)と、同レースで3着だった坂口晃輔

準決最初に挑むのは深谷知広-敏洋だ。2予では深谷が前半10秒9、後半11秒1で逃げ切った。番手の敏洋は「バカヤロー、あいつ踏み直しやがって」とそれが悪いような言い分。「俺が付いたら、トーン! スルスルスルーと駆けるのがベストなのに、ジワジワジワーッと駆けて4角MAXで行きやがって」。擬音ばかりだが、何を言いたいかは伝わってくる。要は、もうちょっと手加減してくだせぇと言うことだ。「今度はブッシューッと差しますから」と、威勢だけはいいので取り上げた。

このレース、郡司浩平、山崎賢人にラインができる。今節、存在感がない山崎だが、番手が山田英明なので警戒が必要だ。深谷は1番車を生かして、山崎の後ろを取って主導権を取るのがベスト。後は郡司のまくりを警戒するだけだ。ベテランに優しいレース展開を期待する。(日刊スポーツ評論家)