深谷知広の勝利者インタビューを場内で見た。そのとき、あるベテランファンが「昔、脇本(雄太)と深谷が先行日本一をかけて走った時、俺はいくらもうけた」などと話していた。

ディープなファンは選手の生き様まで見ている。展開待ちでは心はつかめない。自分で展開を作る選手に、ファンは心引かれるのだとあらためて思った。2予A9Rは深谷が人気を集めそうだ。ラインができる自力選手に本格先行が見当たらず、主導権は握れそうだからだ。松本貴治にラインができれば深谷も簡単に先行させてもらえないだろうが、単騎なので位置取り重視のレースをするだろう。

ヤマコウ(左)は2予9Rの松本貴治に期待した
ヤマコウ(左)は2予9Rの松本貴治に期待した

その松本は、意外にもヨコの動きにセンスを感じた。久留米G3の決勝で清水裕友の後ろを回って3着に食い込んだが、決して楽な展開ではなかった。まず内で粘った松川高大に競り勝ち、最終4角では、まくってきた三谷竜生をどかして自分のコースを作った。どの動きもよくこなせていた。「先行するにも位置取りを考えてしなければいけないと思って戦うようになった」と、いつもの硬い表情だったが、どこか余裕を感じる受け答えに思えた。今までの先行実績、久留米G3の決勝の動きを見ると、収穫の時期に入ったと思う。

そのためにも単騎のレースで経験と実績を積んでおきたい。自ら動いて先行の3番手を取れるレースができれば最高だ。普段から先行選手と戦っているだけにまくりの切れ味に不安はないだろう。(日刊スポーツ評論家)