コロナ禍で開催される川崎全日本選抜は、厳戒態勢で行われる。まず、取材側と選手の接触を避けるために個別取材は禁止。ビニールカーテン越しの取材となり、イメージはガラス越しに別れを惜しむカップルのよう。検車場も行けず、取材テントの下にある隙間から、遠くに見える選手を探して声を掛ける。まるで高校生が好きな異性を探しているようだ。

ヤマコウはV候補筆頭格の松浦悠士に熱視線を送っている
ヤマコウはV候補筆頭格の松浦悠士に熱視線を送っている

高松G3決勝の松浦悠士は、脚力でねじ伏せるような走りだったが、2予も魅力が詰まったレースだった。小原唯志が先行して、4番手をイン不破将登、アウト松浦で並走。不破が当たってどかそうとするが、松浦は上半身で吸収してしまった。不破は、イン競りは決して弱くない。その彼が「こんにゃくに当たっているようだった」と驚きの顔を見せた。豊橋では深谷知広をまくり、高松では平原康多の番手まくりを破り優勝。そして高松2予のさばきがあって、現在最強と言える。

10Rは松浦以外の自力選手は、ヨコのさばきは苦手だ。松浦は、先手ラインに乗って勝機をつかもうとする稲川翔や単騎の坂口晃輔を入れても6番手。8番手になったどちらかの選手(新山響平や岩本俊介)がカマすので、まくって勝利をつかむだろう。

高松G3の決勝は、町田大我が後ろ攻めで、真杉匠が前受けから突っ張った。「新人らしく後ろ攻めで」と松浦の意向だが、走り方にもこだわる松浦らしい一面だった。21年最初のG1でどんな走りをするのか注目したい。(日刊スポーツ評論家)