夏の北海道は気持ちがいい。函館空港に降りた瞬間、普段とは違う空気を感じることができ、湿度の低さも心地よい。

競輪選手が一番テンションが上がるのは函館競輪場だ。ナイター競輪が始まったのがここなので、ナイター開催がよく似合う。

5月に行われた函館G3の優勝は松浦悠士だった。しかし、一番印象に残ったのは2予の佐藤慎太郎、小松崎大地、永沢剛のレースだった。あのレースは、おのおのが与えられた任務をこなし、3人で準決入りを果たした。特に、慎太郎や永沢の職人っぷりが素晴らしかった。

レースはナマモノなので、全部筋書き通りに動くとは限らないが、ラインとして最高に機能したレースだったと思う。

山崎賢人を目標に得て驚きの表情を見せる佐藤慎太郎
山崎賢人を目標に得て驚きの表情を見せる佐藤慎太郎

慎太郎の戦法は絶滅危惧種の「追い込み」だが、自力がない選手の見本になる。タテ足が劣る分、テクニックやコース取りに活路を見いだす。

昨年後半から調子が戻ってきたとはいえ、全盛期の差し足からすると物足りないだろう。久留米G3の2予は森田優弥を追い込めず、準決は岩本俊介に続けず決勝に乗れなかった。

本人はSNSに「応援ありがとうございました。少し休むわ…」とつぶやいた。相当悔しかったのだと思うが、それは年齢なので仕方ない。そこはしっかり受け止めて、少しでも隙のないレースで「プラマイゼロ」にするしかない。

予選8R。山崎賢人の後ろに付ける粋な番組に応えるためにも、しっかり追走して1着を目指してほしい。(日刊スポーツ評論家)