準決12Rを走る芦沢大輔が先日、キハダマグロを釣ったそうだ。これは、競輪界でいうならGPやG1に匹敵する偉業らしい。

レーススタイルは昔かたぎで、仕事場ではめったに笑顔を見せない男が、その時の写真は満面の笑みだった。2予B・8Rの兄弟連係を経て、準決まで駒を進めた。競輪の世界でもキハダマグロを狙ってほしい。

準決11Rでヤマコウが注目する鈴木庸之
準決11Rでヤマコウが注目する鈴木庸之

今日はノブ(鈴木庸之)を取り上げる。準決11Rは目標もなく厳しいメンバー構成だ。ただ、先手を取りそうな北日本ラインが、ヨコのさばきが得意ではない選手ばかりなので隙がある。

今年6月に鎖骨を折った。手術せずに自然治癒を選び、やっと調子が戻ってきた。腰痛で長期欠場したり、彼もけがと闘っている。

競輪選手に限らず、アスリートはけがとの闘いがつきものである。むしろ、けがをしない選手の方が少ない。克服できない選手は自然に淘汰(とうた)されていく厳しい世界だ。ノブも何度けがをしても乗り越えてきた姿勢が、妥協のないスタイルにつながっているのだろう。

「準決はどう戦う?」と聞くと「いい位置を取りたい」と言う。問題はそこからどうするかなのだが、中団を取ってまくれるようなメンバーでもない。「そこからは、ヤマコウさんが書いてくれるように走ります」と煙に巻いた。

私がノブなら中団を取った後、内を突いて決勝入りを狙う。それしかない。

2予A・11Rでも厳しいところを突っ込んで2着に食い込んだ。リップサービスもあっただろうが、この原稿を読んで参考にしてほしい。(日刊スポーツ評論家)