新田祐大はこの大会で優勝するとグランドスラム達成となる。11Rが終わった時点で北日本4車がそろって新田が有利に思えた。しかし、12Rで平原康多と諸橋愛が決勝に乗ったことで、優勝争いは混沌(こんとん)としてきた。

ラインから優勝者を出したい新山響平と吉田拓矢を比較する。両者の準決は、新山が打鐘から仕掛けて先行逃げ切り、上がりタイムは11秒5。吉田も打鐘4角先行して、3着ながらも11秒4で互角だ。先行意欲はどちらが強いだろう。私は新山だと思う。なぜか? 吉田は出られたら新田をのかせばいいという気持ちがどこかにあるからだ。対して新山は吉田に先行されると苦しい。タテ足に特化している北日本勢と、さばきもできる選手がそろう関東勢との違いだ。

吉田は「高松宮記念杯で準優勝してからタイトルを意識するようになった。納得する走りをしたい」と言う一方で、新山は「北日本の役割をしっかり果たしたい」と好対照のコメントを残している。吉田は「先行を基本に考えるけど、いざとなったらヨコもするよ」と私は受け止める。

ヤマコウが注目する平原康多
ヤマコウが注目する平原康多

レース形態は、吉田が前受けして、北日本勢が後ろ攻め。新山の押さえ方が甘いと吉田は突っ張る。新山の同期吉田に負けたくないという気持ちと、吉田の地元地区で負けられないという気持ちがぶつかり合って、同期で先行争い。それでも吉田は、たたかれると新田のヨコ。平原も自分でさばけるので、野原雅也がまくる前に仕掛けたいだろう。関東勢が決めると考える。(日刊スポーツ評論家)