日本選手権(ダービー)は勝ち上がりの厳しさや格式もあり、どのレースも緊迫感があった。

優勝は脇本雄太だったが「なんで平原康多は2角から行かなかったの?」と、よく聞かれる。「(佐藤)慎太郎に差されたくなかった」とか「真杉(匠)と決めたかったのか」など、いろんな推測がある。20年の平塚グランプリ(GP)や21年の静岡GPの例もある。

それを平原の優しさと捉えるのは簡単だ。しかし、私はその裏を読みたい。それは「余裕がなかったから」だと思う。他のG1と違って「なぜダービーはどの選手も欲しい」タイトルなのかというと、実力日本一を決める大会だから。その称号を、余裕があればつかんでいると思うのだ。

「脇本雄太が優勝すれば、古性優作はGPを有利に戦えるから遠慮する?」と聞かれることもあったが「日本選手権」競輪だからあり得ない。それくらい、ダービーに懸ける意気込みは他のG1とは違う。

そこから中4日での函館G3。ダービーのような緊張感で走ることは無理だと思うので、コンディションはしっかり見極めたい。菊地圭尚以外は…(笑い)。

ヤマコウが期待する地元の菊地圭尚
ヤマコウが期待する地元の菊地圭尚

圭尚はダービーの1予で1着を取り、全盛期のスピードが戻ったように見えた。だが、その後は9、9、8着で終えた。これは、地元福島勢への遠慮もあっただろう。

3場所前の宇都宮F1から自転車がよく伸びている。函館競輪場は最大カントが約30度、直線が51・3メートルなので、待ち過ぎると勝機を逃す。優勝を狙うには冷徹さも必要だ。(日刊スポーツ評論家)