12月のG3は、年末にKEIRINグランプリ(GP)が控えているので、S級S班の参加が減る。高松G3は宿口陽一だけで、今回の松戸G3は清水裕友ただ1人。厳密にいえば、来年のS級S班は決まっているので陥落直前のS班だ。私が引退を決めたのも、年明けからF1をこなし、賞金を積み重ね、あるいはタイトルを目指してGP出場することに自信が持てなかったからだ。

気持ち新たに挑む清水裕友
気持ち新たに挑む清水裕友

しかし、清水は違う。今年、脇本雄太や新田祐大がそうだったように、赤いパンツを履いてないだけで、誰もが彼らを意識して走っていた。S班の称号は過去の評価であり、今の評価ではない。赤パンツは「記号」だ。清水はまだ若いし、黒いパンツでしか得られないことを経験するいい機会だと思う。防府G3、G1競輪祭と続いた最後の賞金争いも将来、必ず生きてくる。

競輪祭の準決、北津留翼と中団争いで力を消耗するくらいなら、先行する坂井洋の番手、平原康多のところに追い上げた。中団外並走で4着ほどつまらない負け方はないので、あれでよかったと思う。今年前半の清水に必要だったのは、あの必死さだった。最終日はまくって1着。残念ながらGP出場は逃したが、ファンの大きな声援は、清水にGPへ出場してほしいのだと思った。通例ならボーダーの選手は最終レースを見届けるものだが、彼は決勝を見ることなく小倉競輪場を後にした。清水の決意を感じた。

防府記念を5連覇して、白いフェラーリで帰る清水は最高にカッコよかった。来年、またあの姿をG1で見たい。(日刊スポーツ評論家)