大寒波が襲来して、豊橋競輪場にも雪が舞った。取材で外に出ると冷たくて手が痛い。そんなコンディションの中、1人黙々とセッティングを確かめる選手がいた。鷲田幸司である。SNSで人気の彼も、裏では真剣に自転車と向き合っている。ただ、試乗する後ろ姿は、パンダが自転車に乗っているようだった。

ヤマコウは1予9Rに登場する昨年覇者の原田研太朗にエールを送った
ヤマコウは1予9Rに登場する昨年覇者の原田研太朗にエールを送った

昨年は原田研太朗が優勝した。連勝記録(豊橋G3を含めて16連勝)と重なり話題を独占した。しかし、いい時もあれば悪い時もある。昨年の後半は歯車が狂って成績が急降下。10月の京王閣G3の前検日に「今後、人の後ろは回らない」とコメントし、初日は香川勢と別で単騎を明言。広島G3決勝では同県の犬伏湧也がいても単騎を貫いた。そして、犬伏、久米良の3番手からまくって3着に粘った。

いろんな意見があるだろうが、私は潔くて良かったと思う。彼の弱点は優しさがレースに出ること。位置取りや組み立ての甘さは優柔不断によるものだ。それを払拭(ふっしょく)し、強い決意を示せたことは大きい。単騎でやるのは大変だと思う半面、気楽な面もあるが、ひとつ言えるのは単騎でもヨコができないと肝心なレースほど好位を回れないということ。選手も観察してるので、それができる選手かどうかを判別している。

今はレースの流れを予測して、組み立てるようになった。それができないと脚力の衰えとともに成績が落ちる。今は、動いてレース勘を養う期間だ。9Rは松坂侑亮と河合佑弥の先行意欲が強い。両者の主導権争いを見極め、すぐに仕掛けることが大切だと思う。(日刊スポーツ評論家)

ヤマコウ印
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