松阪、豊橋と中部地区でG3が続く。弱小の中部軍団は、ただでさえ層が薄いのに、2つに分かれてさらに薄くなった。かつての大砲・小嶋敬二は「神山(雄一郎)さんと同じレースだから、顔見せで後ろを回ったら少しは絵になるでしょ」という始末。中部の選手には、1人でも多く活躍してもらって豊橋G3を盛り上げてほしい。

元愛知の深谷知広にとっても、凱旋(がいせん)レースになる。9年ぶりのビッグ優勝で、選考用賞金ランキングは8位に上がり、KEIRINグランプリ出場も視野に入った。最近は人に任せるレースも増え、年始の大宮G3も郡司浩平の番手で優勝した。それでも、混戦慣れしていないイメージは抜けなかった。しかし、青森G2共同通信社杯の決勝は、まくり上げた嘉永泰斗と絡んで足を使いながらも新山響平をとらえて優勝。「あの不器用な深谷が、ここまでできるようになったのか」と感慨深かった。

大器と騒がれながら、G1タイトルは2つしかない。普通ならそれでもすごいが、彼ほどの脚力があるなら、グランドスラムを達成していてもおかしくない。他の競輪選手と同じように深谷もけがとの戦いだった。競輪選手は、けがをしてからが勝負だ。深谷もようやく上昇カーブを描いたようにみえる。

ヤマコウは、必ず見せ場を作る深谷知広に期待した
ヤマコウは、必ず見せ場を作る深谷知広に期待した

特選12Rは、徹底先行の新山が前受けが多いので、初手は中団が取れる。後ろ攻めの松本貴治は、後ろから動いて深谷を待つはずだ。そこから深谷がたたいて新山との勝負に持ち込む。今は静岡といえ、豊橋は深谷が生まれ育った土地なので必ず見せ場を作るだろう。(日刊スポーツ評論家)