現代のボート界は「エンジン時代」といわれる。エンジンが全国統一され、ペラはレース場に備え付けとなった。これにより機力が把握しやすくなり、ファンは舟券が買いやすくなった。

 3月、浜名湖SGクラシックでは、開催前からスーパーエース機が話題を席巻していた。駆った岡崎恭裕は、ライバルたちのプレッシャーや、マスコミの過剰な注目を乗り越えて優出(4着)した。そこまでエンジンが噴くようになったのは、整備士の努力が大きかった。

 浜名湖の整備業務を担う(株)ボートエンジニアリング浜名湖支所の北野祐介さんが、スーパーエース機の舞台裏を話してくれた。「一時は廃棄した方がいいという声もありました。でも、(昨年8~9月の)非開催日の1週間で、クランクシャフトを交換して試運転、足合わせをしました。それでも良くなかったので、もう1回クランクシャフトを交換したんです。2回目でようやくこれだ! って感触が来ました。エンジンを良くするための前提でやったので、ここまで注目されたのは整備士冥利(みょうり)に尽きます」。

 (株)ボートエンジニアリングは、12年7月に設立された。宮島、江戸川、平和島、住之江、びわこ、三国、桐生の計7場のエンジン、ボート所有会社が、合同で出資した。業界発展のため、整備士の教育、育成や人事交流も行っている。

 北野さんはさらに続けた。「乗って直せる整備士になりたい」。我々の目に見えないところで、メカニックたちの努力が生きている。業界を支える人たちのおかげでボートレースが楽しめていることを、あらためて考えさせられた。