来夏の東京五輪出場を目指す脇本雄太(30=福井)が8番手まくりを決め、大会初優勝を飾った。今年初めての競輪という不安も、強風も、敵陣の包囲網も、驚異的なスピードで吹き飛ばした。

もう勢いは止まらない、止められない。脇本が8番手まくりで圧勝した。復調した浅井康太でさえ、追走するが差を詰められない。W杯金メダリストは近畿勢の仲間に3度胴上げされた後に本音を漏らした。「ホッとした。人気に応えないといけない不安感があった」。そして表情を緩ませた。

実力日本一を示す、示さなければならない4日間を全力で駆け抜けた。「決勝は4日間で一番、自分に展開が向いた」。打鐘で先行態勢を取る渡辺雄太が残り1周でペースを上げる前に、6番手から山崎賢人がカマす。脇本は前と車間が大きく空いたが「仕掛けるタイミングが全く一緒。運がいい」と振り返ったようにほとんどブロックを受けず前団をのみ込んだ。

Vスパートへの布石を無意識に打っていた。前検日は約3カ月半ぶりの実戦に不安をのぞかせたが、初日に歴戦の村上博幸、2日目は昨年MVPの三谷竜生を引きちぎった。レース勘を整えて臨んだ準決は2着惜敗も、個人上がりは今節最速の11秒0だった。別線勢は後手に回れない恐怖感から早々と力比べを強いられ脇本のチャンスを広げた。

浅井の他は大きく遅れてゴールした。G1やG2決勝で珍しい光景を見せた。もう国内では敵なし。そして視線の先にはKEIRINグランプリ制覇と、東京五輪の金メダル獲得がある。「S級S班だし、グランプリに出たい。G1に出られる選手は数少ないし、日本選手権も頑張る。この後はナショナルチームで練習。まだまだ体は鍛えられる」。ワッキーは、さらなる進化へ心身を高めていく。【野島成浩】

◆脇本雄太(わきもと・ゆうた)1989年(平元)3月21日、福井市生まれ。科学技術高出身。競輪学校94期で在校成績は11位。デビューは08年7月福井(予選1着→準決1着→決勝2着)。G1優勝は18年8月オールスター、10月寛仁親王牌。自転車競技で16年リオ五輪ケイリン出場。17年、18年W杯でケイリン金メダル。19年アジア選手権ケイリンでも金メダル。通算727戦259勝。通算獲得賞金は4億8542万7600円。180センチ、82キロ。血液型A。