下出卓矢(33=福井)は、予選突破が厳しい状況に追い込まれた。5走して2、5、4、5、4着と苦戦を強いられている。

3日目は、5R2枠の1回走り。3枠の峰重侑治が「1コースを取れるくらい飛んでいった」と下出はびっくり。そのため「突発的に」3コース発進となったが、1周2Mで外に流れて4着でゴールした。

「伸びだけなら(節一宣言を出した)和田(操拓)選手とも変わらない。ただ、まくれる伸びではない」と舟足を評価した。

下出は現在A2級。今期勝率(5月以降)は6・03(22日現在)で来期のA1級復帰は厳しい状況だ。昨年の同時期には、平和島のG1周年を制したことが記憶に新しい。また、今年に入ってからは3月平和島クラシック、7月鳴門オーシャンカップとSGにも出場経験を持つ。本来ならば、今の位置はそぐわない。当人はどう考えているのか聞いてみた。

「確かにそうですけど、焦りはないんです。僕は伸び型にするから“ダッシュ専門”みたいに見られているけど、本心は枠なりで行きたいんです。若い頃にはたくさんコースを取られたし、年齢を重ねたら“イン屋”になるのも悪くないと思っているんです」と笑う。自身の現在地を続けて語った。

「僕は今(チルトを)マイナスか、2度のどちらかを選択するようにしています。2度はすごく難しいけど面白い。マイナスは主にスローに入ったときに戦うためです。チルトを跳ねるのは、そうですねぇ…。正解を見つけるためにやっているんです。正解、つまり勝負できる伸びを探しているんです。エンジンの善しあしに左右されず、常に出したい。そのために技能を身につけて、引き出しを増やしたい。正直なことを言うと、それを記念(G1戦線)に戻った時に使いたいんです。他の人とは違う、可能性がある武器を持って戦いに行きたい。だから、今は経験を積んでいるんです」と語る。

勝率が落ちるのは気にしていない。それよりも、思い切り伸びを付けるには、どうすればいいかを考える日々が続く。クールでマイペース。どちらかというと、おっとりしているように見られがちな下出だが、心の強さは並外れたものを持っている。平常心は訓練しても身につけるのが大変だが、下出はそれを天性のものとして持っている。