吉田拓矢(26=茨城)がG1初制覇とともに、大逆転で最後のKEIRINグランプリ(GP、12月30日・静岡)切符を手に入れた。

単騎で挑んだ吉田は最終2センター6番手から、大外一気に突き抜けた。2着には逃げた新山響平、3着には地元園田匠が入った。この結果、GP出場9選手が確定。今開催を途中欠場した山口拳矢は惜しくも次点で初のGP出場を逃した。


競輪祭の決勝ゴール。優勝した吉田拓矢(左)と2着・新山響平(右)が見合う。吉田の後方は3着・園田匠
競輪祭の決勝ゴール。優勝した吉田拓矢(左)と2着・新山響平(右)が見合う。吉田の後方は3着・園田匠

何度も、何度も右拳を振り下ろしながら、吉田は久々のファンの歓声をかみしめていた。ついに届いたG1初タイトル。「信じられないですね。まだ夢なんじゃないかと思う」。喜びを爆発させることで、夢ではない、そう実感していった。


孤軍奮闘の決勝も冷静だった。松浦に割り込まれ、6番手まで下がっても動じない。「一発だけ狙っていこう」。先に踏んだ松浦を追いかけ、2センターから踏み込むと、同期で最大のライバル新山の先行を抜き去った。


競輪祭を制し、決勝ゴール後にガッツポーズする吉田拓矢
競輪祭を制し、決勝ゴール後にガッツポーズする吉田拓矢

仲間、そして家族の支えでつかんだ勝利だ。今年5月、弟の有希が119期生としてデビューした。練習では有希が好タイムを出すと、すぐさま負けじと兄の意地でタイムを塗り替える日々。「すごく、お互い高めあって練習ができている」。


今年の快進撃は、攻め幅が広がった以上に、脚力強化の裏付けがあった。この日、豊橋KEIRINフェスティバルでは有希がS級で2場所連続の完全V。「実は、昼寝をしていて見られなかった」と笑わせたが、吉田家にとっては21年11月23日は最高の一日になったはずだ。


競輪祭の優勝カップを掲げる吉田拓矢
競輪祭の優勝カップを掲げる吉田拓矢

賞金圏外から大逆転で、初のGP切符をつかんだ。平原康多と宿口陽一の埼玉勢は、ともにGP権利を吉田の番手で決めている。暮れの大一番も迷いはない。「志願して先頭を走って、関東から優勝者を出せるように。30日に向けて、しっかり仕上げたい」。日本一の富士山が見下ろす静岡バンクで、今度は矢のような快速先行を披露する。【山本幸史】


競輪祭の優勝賞金ボードを手にする吉田拓矢
競輪祭の優勝賞金ボードを手にする吉田拓矢

◆吉田拓矢(よしだ・たくや)1995年(平7)5月7日生まれ、茨城県つくば市出身。取手一高卒。競輪一家で父哲也さん(51期、引退)弟の昌司(111期)と有希(119期)も選手。競輪学校(現養成所)107期生として15年7月に弥彦でデビュー(1<1>(1))。同10月に3場所連続完全VでS級特昇。通算515戦165勝。通算獲得賞金2億5279万1600円。171センチ、73キロ、血液型O。