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「透明な」JRA裁決を!ファン9割望む

 6月10日東京8Rの審議をきっかけに、JRAの裁決への関心が高まっている。日刊スポーツが実施した緊急アンケートでも回答者の約9割が前記の判定に「NO」。サークル関係者からもさまざまな意見が寄せられた。ファンから信頼される裁決になるためにはどうしたらいいか? 「分かりやすさ」と「信頼」をテーマに、今こそ改革の1歩を踏み出すときだ。

 6月10日東京8Rでの審議事項は、ファンや関係者に大きな波紋を呼んだ。6月14日から24日までニッカンコムで実施した「裁決についてのアンケート」にも2445人という多くの回答が集まったが、そのうちの約9割が「今回の裁決結果には納得できない」というものだった。「過去の裁決で納得できないものがあった」という声も多く、現在の裁決システムそのものが全幅の信頼を得られていないことが、アンケート結果からは見て取れる。

 アンケートの意見にもあるように、今の裁決に足りないのは「分かりやすさ」と「信頼」だ。この特集に際して、問題の東京8Rについての見解を、裁決担当のJRA審判部からあらためて聞いた。走行妨害を判定する基準、「重大な被害とは」などの説明を受け、レース当日に納得できなかった点で解消したこともあった。ただ、丁寧な説明を受けた結果であって、短時間でファンの理解を求めるのは不可能に近い。

 今回、ファンの混乱を増幅させたのは「着順が走行妨害を判断する基準ではない」とされたことではないか? 確かに現行の裁決ではその通りで、基準は「被害馬が能力発揮に重大な影響を受けたか」に尽きる。ただ、馬券を買ったファンにとって何より重要なのは着順。着順が変わる可能性があった疑念が最後まで残ったのは想像できる。走行妨害の基準である「重大な被害」とは非常にあいまいで、ここに改善の余地がある。

 現行の基準が分かりにくいことは、JRA側も理解している。審判部審判課の伊藤忍課長も「時間をかけて説明されれば分かるが、それがなければ分からないというのは、我々が直さなければならない点」と変更の可能性を認める。今後の方向性として英国などで用いられている「被害馬と加害馬の1対1の関係」に限定した明快な基準に進んでいくのも1つの手段。まずは万人に「分かりやすい基準」を確立することが第1の課題となる。

 その上で、裁決システム自体の信頼を増す必要がある。疑問に思う判定があったとき納得できる説明を受けられないから、不信感が増す。第1の課題とリンクする点でもあり、システム全体が負のスパイラルに陥っているのは否めない。

 「プロの目」を磨くため裁決委員も技術向上に取り組んでいる。元騎手の岡部幸雄氏をアドバイザーに迎え週1回の勉強会を開催するなど、より正確なジャッジを行う努力は惜しんでいない。実際に不服申し立てをした経験がある幸騎手も最近の裁決について「最近はより話を聞いてくれるようになったし、ほとんどの場合で正しくジャッジしてくれている」と評価する。

 個々の技術を磨くことも重要な手段だが、システム全体の信頼アップのためには、裁決委員に騎乗経験者を加えるというのは1つの方法だ。以前から言われてきたことでもあるが、幸騎手も「(裁決委員は騎乗経験がなく)微妙なところで話がかみ合わないときもある。騎乗経験のある方が数人入ってもらえれば」と提言する。元騎手が1人加わるだけで判定が完璧になるとは思わないが、より安心感が増すのは間違いない。

 裁定委員会の「中立性」「透明性」を高めることも大きな課題だ。野球でもサッカーでもそうだが、人間がジャッジをする以上100%完璧なジャッジはありえない。競馬の裁決も同様だ。だからこそ不服申し立ても起こる。裁判における最高裁判所に当たる最終的な審理機関として存在する同委員会は中立でなければならないが、完全中立かといえば疑問は残る。

 委員会構成はJRA職員+外部委員(競馬のレースに関する専門的な知識や経験のある人から理事長が委嘱)。3人の外部委員の存在があるとはいえ、JRA内の一組織でしかない。同委員会は法務部の所管で、伊藤課長は「JRAの中の組織として中立性を保って審査するのが裁定委員会の趣旨。審判部と別の部署が管轄しており、審判部はあくまでも被告の立場」というが、外から見れば審判部も法務部も同じJRA。実際に公正な審理が行われていたとしても「身内同士」という感覚はぬぐい切れない。小島茂師が「裁定委員会が機能することが重要」と主張する点でもあるし、幸騎手が「裁定委員会は(基本的に)競馬会がやっているものなので、覆すという判断は難しい」と漏らす点でもある。

 理想はすべてを外部機関に委託して完全中立の組織とすることだが、急速な改革が難しければ別の手段もある。非公開で行われている委員会を公開するだけで印象は変わる。調教師会や騎手会の代表、マスコミなどの傍聴を通常の裁判と同じように認めれば「透明性」は劇的に増す。最終的な審理機関が「完全中立」の立場で君臨するだけで、裁決システム全体の信頼度は大きく変わってくる。

 不透明、不親切なシステムはファン離れを加速させるだけ。今回の一件をきっかけに、JRAにはより良い1歩を踏み出すことを期待したい。【取材・構成=鈴木良一】

 [2012年7月17日8時14分 紙面から]




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